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研究

イギリスでの長年にわたる経験を見ると、学校の時間割で固定されたカリキュラムに、環境教育がその基本的な目的を達成できるような形で影響力を持つことは、だんだん難しくなっていることがわかる。このことから、環境教育の重要な要素を学校に導入するために、これまでとは全く違ったアプローチを試み検討する価値があるのではないだろうか。

本編では、違った文脈から環境教育に光を当てる一つの行動研究について述べる。そのねらいは、理解を向上させることに取組むと同時に、行動の変化をもたらすために参加を奨励することである。ハンガーフォードとボルク(Hungerford and Volk,1990)の研究では、永続的な行動の変化をもたらすための効果的な環境教育ができるかどうかには、多くの場合、たくさんの要素が絡んでいる。彼らの成果や他の研究結果を用いて、このプロジェクトの一連の目的を以下のように考えてみた。

。)環境問題自体への知識、理解、意識だけでは、学習者の行動を効果的に変えるのには不十分である。行動がプロセスの中の不可欠の部分である。

「)もし環境教育の重点が時間割で定められたカリキュラムにある場合は、どうしても軽視されるか、知識的側面に偏る傾向がある。したがってカリキュラムの枠を越えて、環境教育を学校生活全般に拡大しなければならない。

」)長い期間にわたる学習経験が必要である。

、)学習は生徒に馴染みの深い事柄から始め、この土台を基に、生徒が学習したことを国や世界のレベルでの影響に関連させることができるように構築していくべきである。

v)環境問題の倫理的な側面が重点として強調されるべきである。

ヲ)このプロセスに関与する全員、そしてこれには学校で働くすべての人が含まれるべきだが、彼らがこのプロセスを自分のものだと感じることが重要である。

ァ)人間関係や市民的技量にも重点が置かれるべきである。

ィ)そのプロセスは、ハンガーフォードとボルクが能力授与と呼ぶものと関連する、自己がコントロールできる場を増やすことを目指すべきである。また、現場のフィールドワーカーが中心となって開発した参加型評価アプローチ(WWF,International,1993)に基づいた質問および評価方法を採用することが決定された。正規の形式の調査票はしばしば冗長で抽出方法以外の決定的なミスで狂わされるし、研究者が教育機関に赴く訪問調査は機関の責任者との表面的な接触しかできなかったと思われる結果のものが多く、今回の質問評価方法はこうした一般的な質問方法に飽き足らないというところから生まれたものである。今回の調査のために採用されたこのアプローチの諸相はチャンバースChambers(1992)に基づいており、以下にそれを挙げる。

*対象とする学校や雰囲気についての地元の情報を活用する。

*教えるのではなく、調査する側が喜んで聞く体勢をとり、質問の中で「腰の低い姿勢」を保つ。

*プログラムは、協力する学校の管理の元に、できる限り柔軟で変化に対応できるようなものにする。

 

 

 

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