環境教育の中での「批判的アプローチ」と彼が呼ぶことがらについて論じているが、それをスターリングSterling(1992)は「社会批判的」と呼んでいる。それらはトビリシ宣言(Unesco-UNEP,1978)を出発点とし、そこからこの種の教育のために五つの中核的な重点目標が明らかにされた。
1. 自然のシステムと社会的システムの相互依存、現在および未来の問題の歴史的な身方、問題の原因と結果とその様々な解決法の研究、イデオロギー、経済および技術の吟味、地方、地域、国家および地球レベルの政府と経済との関係などについて考察する、全体論的な見方に基づいた環境意識の育成に重点を置いた批判的環境教育。
2. 現実の問題に焦点をあて広範な資料や多様な情報の研究を含んだ多くの実践的学際的な学習経験を通した、批判的思考および問題解決能力に重点を置いた批判的環境教育。
3. 環境の質に対する感受性と関心に基づいた環境倫理の育成の重視。
4. 環境を維持向上するための様々な形の社会行動への参加を促進する、政治運用能力に関する姿勢、理解および技術の育成の重視。
5. これらの目的に合致する指導方法が必要である。
(Fien,1993,p55に基づく)
ハックルHuckle(1993)は、環境教育の三部から成るモデルを土台として、このモデルと三つのイデオロギー的立場との関連を主張している。一つは、環境の管理とコントロールのための教育だが、ここでの重点は人間の利益活動の技術的側面である。彼はこれを主として環境についての教育に関連させている。もう一つは主として解釈(に基づいた実践)に関連した環境意識のための教育で、環境の中で学ぶ環境教育に最も近い。最後は、危機的な人間の利益活動の側面に焦点を当てた持続可能性のための教育で、これは環境のための教育に最も関係が深い。教育現場の状況によってこれらが様々に組み合わせられているものの、管理とコントロールのための教育の占める比重が非常に高い。また、学校教育の中に企業経営の用語が浸透していることも重要な問題であろう。この種の用語は、教育が運営されるべき方法についての前提を反映しており、しばしば環境教育家が提唱する合意に基づくカリキュラム運営と矛盾する。
教職に関する最近の調査では、多くの教師達が学校のカリキュラムに環境教育を含めることに賛成し、すべての学校が関っていくべきだと考えている一方で、彼らの熱意に影響する多くの重要な問題が残っていることを示している。ここでは、こうした問題とは何かを考え、自分達の学校に環境教育のさらなる発展が起こるとした場合これらがどんな結果をもたらすかをよく考えてみるのがいいと思われる。これらの問題点はどれが特に重要というのではないが、教師達がどんな範囲でどんな性質の制約を感じているのかがわかる。これらは主に、ゲイフォードGayford(1991)が収集した証言および後日更新されたものに基づいている。これらの問題を考察しさらにこれらに対処することによって、学校教育における環境教育の将来の前進の一助となることを願っている。