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に重点を置いたものもある。環境教育は、環境あるいは環境保護と教育の両方にその理論的な土台を置いている。これを理解することは、その目的や方向性を考える時に不可欠である(Greig他,1989)。最近の発展によって、環境保護運動家の多くが考える環境教育の目的はさらに広がった。本編では、重要な影響を与えたいくつかの考え方を考察する。

 

環境教育に大きな影響を与えた最近の説

 

最近数年間に、環境および人間活動の環境への影響についての考え方には、数多くの重大な変化があり、現在の環境教育の捉え方に深い影響を与えた。現在では、分野全体の相互関連の程度と範囲がより現実的に捉えられ、環境に関する諸問題はすべて相互に関係していると考えられるようになった(Smyth,1995)。一つの問題を考えると他の要素が関係していることがわかり、このようにして相互に関連した概念が複雑に組合わされることになる。これに加えて、一つ一つの問題の中に、化学、技術、経済、美学、政治、倫理、文化および精神論など多くの側面がある。総合的にバランスの取れた見方をするためには、これらすべての分野の専門家の共同作業が不可欠である。また、環境教育の分野で働く者は、より全体論的に考える力が必要で、知識が従来発達してきたような断片的専門的な方法ではもはや対応できない(Sterling,1992、Fien,1995)。

 

今日、主要な問題は地球的規模で考えられることが多く、もはや各国が個々に一方的に対応することはできなくなった。環境問題に対して、一つの地域での行動が、違う場所、しばしば遠く離れた世界のどこかに影響を及ぼす、という共通責任の考え方が確立している。大気、海洋などの地球の共有財産という概念と、我々の個人および共同の責任とが、この考え方の重要な要素である。しかし、大多数の人々にとっては、個人や地域の状況の方が、考え方やその結果の行動により大きな影響力を持つと考えられる。この現状認識に立って、「地球規模で考え、地域で行動する」という考え方(国連United Nations,1992)が、イギリスその他の多くの場所でのローカルアジェンダ21構想(地方政府管理委員会Local Government Management Board、1993)の策定に当たっての、柱となるスローガンとなった。ここでの重点は、個人や地域社会の行動がどのようにして、より広範囲に遠い場所や地球全体の出来事に影響していくかということである。ここから、環境教育の二つの重要な側面が現れてきた。一つは、一人一人が実際に環境改善プログラムに参加することの重要性である。世界環境保護戦略(World Conservation Strategy)(IUCN他、1980)は、環境教育の目的を達成するための戦略として、環境行動への参加を強く提唱した。この考えはさらに、環境教育の手段として地域教育を利用するところまで拡大された(Smyth,1995)。もう一つの側面は、消費者行動および消費者行動と環境問題との関連についての意識を高めることである。グリーンコンシューマリズム(環境消費者運動)は、今日では多くの人々の意識の中に確立しており(Mori,1987、Mintel,1994)、イギリス

 

 

 

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