ドラインやフレームワークや法的命令などが実現されつつある。カリキュラムや学習活動も多様なものが既に開発され、先生たちは選べるようになっている。しかし、地元の学校で環境教育を実施させる法律権限を持っているところはほとんどないから、実施は学校区、校長あるいは個々の先生次第という状態である。いくつかの州では環境教育を全学科においてではなく、理科、算数、社会科などだけに限って教えさせている。そのような場合でも、成果がどこまで上がったか、環境教育に関して生徒の理解度をテストで測定しているところはない。したがって次のステップは環境教育の成果、生徒の理解度をテストで評価し、内容や教え方を改善するシステムを各州で確立することである。
4-2 ノルウェーの環境教育
アメリカ、ドイツの場合、現場の教育内容は学校または学校区にほとんどまかされており、国や州の法律、行政の通達文書は、基本理念やカリキュラムのガイドラインを与えるという色彩が強い。またこれらの基本指針を作成するに当たって、行政が独自に組み立てることなく、市民やNGO、専門家が多く参加した委員会組織によって骨子が定められていく傾向がある。これに対して、ノルウェーの教育システムは、行政府が率先して作成している点、教科書は全国で4つの出版社でしか作られておらず均一性が高い点、また教育省が教科書検定を行っていることなどから、日本の教育システムに類似性が高い。
そのため、ノルウェーの環境教育システムの長所については、日本社会においても同様に実施できる可能性があり、我が国の将来の環境教育体制を考えていくために、大変重要な情報を与えてくれているといえる。
以下に、ノルウェーの環境教育について、法律、政府文書を主体に取り上げながら、解説する。
4-2-1 ノルウェーにおける環境教育の概要
ノルウェーの環境教育・組織的アプローチ
はじめに
環境と開発に関する世界委員会のレポート「私たちの共有する未来」の中で、天然資源は人間生活を持続するために使用されるが、将来涸渇しない方法で開発を達成するには、社会的、経済的、政治的システムを根本的に変える必要があると述べている。そのような変化は、変化の必要性を理解し、高い人間的な環境倫理と自然のありがたみを悟る大多数の市民によって深く支持されてはじめて達成できる。したがって環境教育(EE)は持続可能な開発に不可欠である。
ノルウェーで、教育システムへの環境問題の統合は1970年に始まり、以来非常に高い政治的優先順位を与えられている。白書No.46(1988-89)「環境と開発」は、教育システムは、持続可能な開発の課題に対処する重要な役割を果たすものであり、EEの内容と方式は、新しいカリキュラムのガイドラインに統合されると述べている。ノルウェーのEE政策を支える中心概念は、すべての年代層に向けEEを教育活動の幅広い範囲に統合する:皆のための環境教育である。