1992年に開催された「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」でも宣言されたことだが、今や私たちは、人類の社会基盤である自然生態系の質と維持向上につながる発展、ならびに過去の開発によって減少消失した自然生態系を回復し、持続的に発展できる社会を構築していかなくてはならない。
そのためにも『直接的な自然の破壊の問題』に対しては、従来の開発優先の土地利用を、「より広い面積をより円形に近い形でかたまりとして残し、それらを緑道でつないでいくこと(1980,IUCN)」という自然生態系を配慮したものに国レベルや地域レベルで転換し、自然の保全・復元・創出を推進することが求められる。
もうひとつの『ゴミの問題』に関しては、個人レベルではなるべくものを買わないという「質素な生活」を目指す必要がある。つくられたものは、すべてゴミとなる。大量につくれば、それだけ大量のゴミが出るのである。まずは「ものをできるだけ買わない」ことが、大量生産・大量流通・大量消費・大量廃棄の社会経済システムを改善していくための第一歩となる。
また、必要最低限のものを買うときにも、長持ちするか、再使用・再利用ができるか、リサイクルできるかを判断しながら、購入することが求められる。ちなみに、リサイクルについては、いったん原料に戻すために大量のエネルギーを使い、二酸化炭素などのゴミを出すので、最後の手段と考えなくてはならない。
社会レベルでは、貿易で生じる物資の収支のアンバランスを是正する必要がある。輸出でお金を儲け、そのお金で安い原料や食糧を輸入するという、貿易に頼った社会のままでは、輸入などの際に大量のエネルギーを使い、また国内にも大量のゴミを残す。経済優先の大量生産・大量消費社会を見直し、国内、さらには地域レベルでなるべくものが循環できる社会を確立していくことが、持続可能な社会づくりにとって必要不可欠な要素である。
2-2-2 自然生態系についての認識の不足
私たちの社会基盤である自然生態系を守り育てる際に、当然のことながら、「自然とは何か」ということを正しく把握する必要がある。
一般に自然の豊かさは、「緑の多さ」という視点で評価されがちだが、自然をつながりあるシステムと正しくとらえた場合、自然の豊かさの評価基準となるのは、決して緑の量だけではない。そこにどれだけ多種多様な野生の生きものが生息・生育しているかが評価基準となるのである。
1992年にブラジル、リオで開催された地球サミットでは「生物多様性条約」が締結された。この条約の通り、今、世界的に求められていることは、『種』『生態系』『遺伝子』の3つのレベルにおいて、生きものの多様性を確保することである。自然の地域特性を踏まえ、地域ごとに昔からある自然を守っていこくとが、各国で求められている。
そうした世界的な潮流のなか、我が国の小中学校における環境教育の取り組みをふりかえると、自然の豊かさを単に「緑の多さ」という景観的な視点でのみ捉え、指導している事例があとを絶たない。具体例としては、自然を守り育てるといった目的で、野外にコスモスなどの園芸外来種