1-1 アメリカ合衆国
1-1-1 アメリカ合衆国における環境教育の動向
アメリカ合衆国では、日本の教育システムとは違い、連邦政府は合衆国内における教育カリキュラムの策定にはまったく関与していない。主に州並びに学校区レベルから関与し始めることになる。但し、自由・平等・個人の権利等が保証されているアメリカ合衆国では、州並びに学校区で作成されるガイドラインも非常に柔軟、かつそのほとんどは強制力を有さず、カリキュラムの決定は現場の教師の裁量に大きく委ねられているといっていい。
連邦政府における環境教育の取り組みは、主に環境保護庁や教育省が担当している。その内容は、主に各機関との連携や各プロジェクトに対する支援となっている。環境保護庁では、1990年に全国環境教育法を策定し、その中で「環境意識の高い責任感のある国民、並びに環境の保護に関する個人の責任感を養うために、全国的な教育活動を支援すること」を目的に、環境保護庁が進める10のプログラムを発表している。また教育省では「米国連邦政府教育省の環境教育戦略」を作成し、この中では「環境と持続可能な発展についての教育を各機関の使命とし社会のあらゆる中で実行されるよう奨励努力すること」「公式・非公式を問わず、環境と持続可能性の教育をマルチメディア・クリヤリングハウス(情報出入口機関)等の最新の技術を使って、支援すること」等を求めている。
州レベルでは、各州とも独自に環境教育推進への取り組みは始めている。以下が1996年における各州の取り組み状況を表したものである。
【各州における環境教育の包括的なプログラムの現状(Wilke,1996)】
州における環境教育マスタープラン
州の総括的なプラン。その目的は活動方針の計画をたて、州の環境教育の目標を達成するための実行スケジュールをつくることである。
アリゾナ州・アーカンサス州・コロラド州・マサチューセッツ州・ミネソタ州・ニュージャージー州・ノースキャロライナ州・ペンシルバニア州・ワシントン州・ウェストバージニア州(以上11州)
小中学校における環境教育推進に向けた州の条例または行政文書
教員が環境教育を現在あるカリキュラムに組み入れることを取り決めもの。これらの取り決めは、立法上または行政的な手続きをもって定められていく。
アーカンサス州・カルフォルニア州・イリノイ州・アイオワ州・メリーランド州・ネバダ州・オハイオ州・ペンシルバニア州・ワシントン州・ウィスコンシン州(以上12州)