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3. 「エコロジカル・ネットワークを適用した埼玉県の将来像計画図」の作成

 

3-1. 「埼玉県の土地利用が現行法制度のまま行われた場合の想定図」の作成

 

原則として、生物多様性保全上の重要地域(コアエリア・生態的重要地区・コリドー)は法制度の裏付けをもって確実に保全されることが望まれ、それ以外に地域においては、これらの重要地域に影響を与えない範囲で人間活動との共存を図ることが望まれる。

そうした場合、生物多様性という視点から選定した重要地域が、法制度による土地利用の誘導方向とどの程度合致しているのか、もしくはずれているかの格差(ギャップ)を解析した別添図2からも明らかなように、県西部の山岳地域を除くと土地の担保性は総じて低く、埼玉県の土地利用が現行法制度のまま行われた場合には、生物多様性保全上の重要地域の面積的減少とそれに伴う生物多様性の質的貧化を招くことが予想される。

ここで、土地利用が現行法制度のまま行われた場合にはどの程度の減少・貧化が起こるのかをコンピューターにより計算を試みる。条件は、土地の担保性評価Aランクは減少率0%、Bランクを50%、Cランクを75%、Dランクを87.5%、Eランクは100%全てが土地改変を受けると仮定する。次に、コアエリア・生態的重要地区・コリドー等、生物多様性保全上の重要地域に設定した地域について点を与える。そして、ある一点を中心に高次消費者の概略の行動圏を意識した9k?uの枠を設け、その中に入るコアエリア・生態的重要地区・コリドーの面積に与えた点数を乗じて算出した値をその中,心地の点数として現す。これを全県下で計算し、点数の高低を色に置き換え、生物多様性保全上の重要地域間の関係性を示したものが別添図3上図(1)である。

図より、生物多様性保全上の重要地域は貧化・減少し、重要地域間の関係性が希薄になりまたは分断され、個々の重要地域は孤立化することが見て取れる。

これは、「埼玉県の土地利用が現行法制度のまま行われた場合の想定図」とよぶが、仮にランクBの地域が10年で10%程度開発される場合を想定するならば、「エコロジカル・ネットワークを考慮しない50年後の将来像図」と読み替えることができる。

 

 

 

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