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2-2. 生物多様性保全上の重要地域におけるギャップ解析

 

上記の法制度による地域指定が複数設けられている場合には、その中でも最も実効性が高いと考えられるものを上に重ねて県域内を塗り分け、「土地の保全状況や担保性からみた全県域の評価図」(別添図2上図)を作成する。

ここで、現地・文献調査およびコンピューター解析により生物多様性が高いと判断された区域や生態的生態的重要地区となる地域、コリドー等の生物多様性保全上の重要地域においては、民有地が多いため基本的には公有地化を図ることにより保全されることが望まれるが、困難な場合においては高い担保性の網をかけて、土地改変やその他の人為的影響から遠ざけておくことが必要である。そこで、「土地の保全状況や担保性からみた全県域の評価図」をベースとして、生物多様性保全上の重要地域がどの担保性のランクに位置づけられているのかを明確にするために、コアエリア・生態的重要地区・コリドーの範囲のみを浮き上がらせ「生物多様性保全上の重要地域における土地の担保性評価図」(別添図2下図)を作成する。

これは、生物多様性という視点から選定した重要地域(コアエリア・生態的重要地区・コリドー等)が、法制度による土地利用の誘導方向とどの程度合致しているのか、もしくはずれているかの格差(ギャップ)を解析したものである。つまり、生物多様性保全上の重要地域が担保性の高いランクに指定されていれば、将来においてもその地域の生物多様性は守られる可能性が高いといえるが、逆に担保性のランクが低く規制が緩いか全く設けられていない場合には、その地域の生物多様性は喪失の危機に曝されていると考えられる。

図を見ると、亜高山帯および山地帯においては、土地の保全状況や担保性が比較的高く(緑色および青色)評価されており、今後ともそれらの地域が擁する生物多様性が良好な状態で維持される可能性が高いと考えられる。しかし、台地・丘陵帯や低山帯においては、土地の担保性の高い色調の凡例は少なく、逆に担保性がほとんど認められない黄色の凡例が広く見られることから、これらの地域に分布する生物多様性保全上の重要地域には開発圧が高くかかり、現在保持されている生物多様性は貧化・減少方向に向かうであろうことが示唆される。

次章に示す将来像計画にあたっては、地域制指定の再検討が為されずに、生物多様性保全上の重要地域が多様性を破壊する行為や土地改変に曝された場合を想定して示すとともに、今、エコロジカル・ネットワークの構築を誘導するような地域制の指定が行なわれた場合の将来像計画図をコンピューターのシュミレーションにより示す。

 

 

 

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