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3. 地球規模で移動する生きものたちと埼玉

 

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埼玉県で見られる生きものの中には、県境や国境を越え長距離を移動してくるものが少なくない。埼玉県内で記録されている鳥類は、1997年の冬に渡来したナベヅルを含めると319種に達するが、このうち259種(約81%)は、埼玉県に繁殖や越冬のため、また「わたり」の中継地として飛来する鳥たちである(当会調べ)。例えば温帯以北に生息するガンカモ類は、厳冬期には餌場の湖沼や河川が結氷するため餌が摂れなくなり温帯域にわたってくる。逆に気温が常に高い熱帯域では、降雨が少なくなる乾燥期に餌となる果実や昆虫が少なくなるため、鳥たちはより快適な環境を目指して温帯域に移動してくる。

水系に目を転じれば、川の中・下流域で見られるモクズガニは、産卵場を河口に持つため、やがて成熟すると産卵のために河口に下る。サケは、北太平洋・オホーツク海・ベーリング海・北極海といった寒帯の海に広く棲息し、産卵のために利根川を含む沿岸河川に遡上する。ちなみに利根川は寒帯の海との接点をもつ世界でも最も南に位置する河川の一つであり、サケが自然遡上する世界で最も南の川の一つに数えられる。河川池沼に生息するウナギは、台湾・沖縄の東方の海域で産まれ、その幼生は黒潮の

 

 

 

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