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帯林、シイ林・カシ林を代表とする暖温帯林となっている。

ただし、低地の河川集中域では、荒川や利根川の大きな河川の河川敷にはハンノキ林が、河川の後背湿地や冠水する氾濫原にはヨン群落やオギ群落が自然植生として見られる。

 

1-4. 人のかかわり

 

さて、私たち人間は、このような自然環境の恵みを受け、昭和20年代までは、伝統的な農林業を主とした土地利用をしていた。そして、自然環境は比較的豊かな状態で残されていた。ところが、昭和30年代の高度経済成長期を幕開けとして、埼玉県は東京のベッドタウンとして飛躍的に人口が増加した。いまなお人口は増え続けており、平成2年から7年にかけての人口増加率は全国で第1位である。その結果、農林地から宅地への土地利用転換が急速に進んだ。

開発の波は、東部の低地、台地に止まらず、今や山地にまで至っている(図?U-2)。そして、宅地のみならず、工業団地・ゴルフ場の建設が造成・計画されている。これらの大規模な開発は、野生生物の生息環境を直接的に破壊する。

人間による生物の生息環境の破壊は直接的なものばかりではない。河川は、高いところから低いところへ広範囲にわたって様々な地域を貫流するため、魚類を始めとして貝類、甲殻類の移動分散の機能を果たしてきた。と同時に、低水敷や高水敷に連続した草地もまた陸水生物や水辺生物の生息地や回廊としての機能を有してきた。ところが、上流から下流にかけて、砂防ダム・貯水池・取水堰などの横断構造物がつくられた結果、水の循環や魚の遡上は妨げられ、こうした生物の移動・分散の機能が低下した。また同時に、土砂の侵食・運搬・堆積のバランスが崩れ、地形形成作用にまで影響を及ばしている。

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平成9年度埼玉県環境影響緩和手法調査報告書(埼玉県,1998)を改変

 

 

 

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