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(3)EECONET:オランダとスペインにおける取り組み

EECONETの策定には、国際的なプログラムの枠組みの中での協力と調整が必要であるが、IEEPという一国際機関がそれぞれの国がネットワークの中で果たす役割を細かく厳密に規定するのは、適切とは言えない。これは、国家レベルの課題である。すなわち、国家のレベルにおいて、いかにしてヨーロッパのネットワークの根底にある原則、目的および選定基準をさらに綿密に仕上げていくか、そして具体的なコアエリア、コリドー、および自然環坑改善エリアを保全・管理するための国家レベルのEECONET戦略へどう発展させていくかが問題となる。

このためのケーススタディとして、人口密度や環境保全上重要な地域の面積などにおいて対照的であるオランダとスペインが選ばれた。これにより西ヨーロッパの広範な生態的状況を明らかにすることも目的とされた。

 

?@オランダ

オランダの自然環境は、ヨーロッパの中で最も人間活動の影響を受けている。自然保護に関するオランダ政府の政策の大筋は、農業自然管理漁業省の責任で立案された「ネイチャー・ポリシー・プラン」で規定されている。このプランの目標は、自然および半自然システムの維持・修復・改善を通して持続可能な自然環境を生み出すことにある。オランダの「国家エコロジカル・ネットワーク(National Ecological Network)」は、この目標を達成するためのもっとも重要な手段として位置付けられている。国家エコロジカル・ネットワークは、EECONETに習い、コアエリア・自然環境改善エリア・コリドーを主要な構成要素としている(カラー図?@)。ネットワークの持続可能性は、外部からの悪影響を最小化することを目的としたバッファーに支えられている。現存している自然だけではなく、潜在的自然・非自然もネットワークの基盤となっている。「国家エコロジカル・ネットワーク」は国の自然保護政策と、それには入らない自然の重要性を持つ地域計画の基盤となり、水管理・環境政策などとも密接な関係がある。

 

?Aスペイン

スペインが位置するイベリア半島は、その特異な気候条件と山岳地の割合の高さなどのため、多くの動植物種の分布限界を含んでいる。そのため、ヨーロッパの他の国に比べ、自然環境という点においては、保護価値の高い国である。また、ハビタットの分断化があまり明らかではないので、綿密に連絡されたエコロジカル・ネットワークが展開されている(カラー図?A)。これは、スペインの伝統的な土地利用、すなわち伝統的な農法により多様な景観が創り出され、また遊牧がハビタットをつなぐや動物の移動経路の機能を果たしてきたということが、背景となっている

 

 

 

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