に含まれる加盟国は、厳正な保護義務が課せられる。第二の目的は、保全上好ましくない状況に置かれている移動性の生物の保全と管理のために、2国間または多国間で合意を得られるよう、その種の分布域に含まれる国を説得することである。しかし、実際にはこのような合意は困難であり、合意に至っているのは、アザラシ1種、クジラ1種、コウモリ1種の計3種のみである。
?DEU野鳥指令(野鳥の保護に関する指令)
EU野鳥指令は、EUの重要な自然保護施策の中では最初のものであり、1981年に発効された。国際条約や国際協力プログラムに基づく義務は確かに重要ではあるのだが、現実には加盟15ヶ国に対し拘束力を持つEUの立法措置ほどには効力を持ち得ない。この指令は、すべての鳥類に対し「十分な多様性と面積を持つハビタットを保護、維持、復元」することを義務づけている。具体的には、加盟各国はリストに記載された絶滅危惧種と危急種、それにすべての移動性の種の生存を保障するための十分なハビタットを保護しなければならない。この目的に適した場所は、特別保護区(SPAs)として分類される。しかし、実際には各国のSPAsの設置は大幅に遅れている。
?EEUハビタット指令(自然および半自然ハビタットと野生の動物相および植物相の保全に関する指令)
1992年に発効されたEUハビタット指令は、ベルン条約における一連の義務に対して、法的拘束力を持たせたものである。この指令によって、EUにおけるハビタットの保護が発展してきので、現在のところEUの自然保護施策としてはもっとも重要なものである。その目的は、特にEUに取って重要な、自然・半自然のハビタットおよび野生の動植物相を保全することによって、生物多様性の確保に貢献することである。具体的には、EUにとって重要な、自然ハビタットのタイプ(特に、優先度の高い自然ハビタットのタイプ)および動植物種のハビタットを維持すること、または適しているならば、それらのハビタットを望ましい保全のレベルまで復元することが求められる。これらの場所は、2004年までにナチュラ2000(Natura2000)と呼ばれる、EU全土に広がる保護区の集まりとなる予定である。
(2)EECONETとは
ヨーロッパ・エコロジカル・ネットワーク(European Ecological Network:EECONET)は、ヨーロッパ大陸全土を対象にした自然保護政策であり、1991年にヨーロッパ環境政策協会(IEEP)によって提案された。これは、ヨーロッパ大陸の何千kmにも及ぶ生態的構造とその複雑な相互関係を保全するために設計された枠組みであり、EUの環境政策の一つとして着実に取り入れられつつある(IEEP、1995)。