た場合の生態系に及ぼす影響についてはこれまで報告が行われておらず、評価することは困難である。
以上のような点に鑑みれば、微生物(特に外来種)の散布には慎重を要する。
留意点4
現場での分析の結果に基づいて、現場の油の生物分解がバイオレメディエーション製剤の適用(栄養剤等を補給すること)によって活性化する可能性があるか否かを評価する。
栄養剤等を添加しても代替手段(放置も含む)と比較して浄化が進む可能性がないと判断された場合、又は、代替手段(放置も含む)と比較して当該適用が現場の水生生物等生態系に影響を及ぼすおそれがありそれを防ぐ手段がない場合は、バイオレメディエーションの適用は行わない。
(解説)
適用が想定される場所における油の生物分解が、特に栄養塩の濃度によって制約を受けていること(または炭水化物を分解する土着微生物が存在しないこと)が示された場合には、バイオレメディエーションは適切な油流出対策技術となる可能性がある。
一方で、栄養塩の添加は油分解生物のみならず他の生物にも公的な生育環境をもたらす可能性があることから、場合によっては富栄養化を引き起こすことになり、(有害)藻類の異常増殖等によって水生生物その他生態系に悪影響を及ぼすおそれも懸念される。想定適用場所における油汚染の状況、自然条件等(留意点2)及び散布剤の成分等(留意点3)の多くの要素を総合的に評価した上で、バイオレメディエーションの効果が期待出来、かつ悪影響の恐れが無い(又は極めて少ない)ような条件が設定できるか否かを十分に検討する必要がある。
留意点5
室内で適用現場と同等の条件を作って実験し、散布剤が有効性を発揮する事及び環境上支障がない事を確認する。
室内実験では、汚染油(成分)の消長を具体的に明らかにする必要がある。また、有効性を保つために必要な散布剤の散布濃度・量を決定するなど、現場小規模実験(留意点6)の設計に必要なデータを収集する。
(解説)
現場で野外実験を行なうためには、事前に室内実験を行なっておくことが必要である。
現場実験では、潮の干満により、物質収支を定量的に把握することは殆ど不可能であり、室内実験のバイオレメディエーションが油のどの部分を何に変換したのか、洗浄効果により流出しやすくしただけではないのかを室内実験で明らかにしておかなければ、現場実験での評価は不可能である。
このように、現場実験では、適用場面により近い条件が設定できる反面、複雑な自然条件等その他の要因により有効性、安全性を確認することが困難になることも十分に想定される。このため、室内実験の段階から、自然条件、油の状況等試験条件は可能な限り実際の適用場面を想定したものとすることにより、有効性、安全性の検討に必要な知見を得ておく必要がある。