(解説)
バイオレメディエーションには、有効性及び安全性の両方の観点からそれぞれ長所と短所がある。これらの特徴を十分に理解した上で、油汚染現場を踏査し、バイオレメディエーションの適用が想定される(適用を必要とする)場所があるかどうかを検討する。
適用場所の想定に際しては、他の油処理・除去方法との比較考察を行うことが重要であり、目的に応じてバイオレメディエーションの特徴が十分に発揮できるような場所を想定する必要がある。例えば、バイオレメディエーションは、微生物を活用して油を分解する技術であり、物理的除去手段と比較して迅速な浄化を行えるものではない。もし、目的が油汚染の初期浄化にあるのであれば、他の物理的手段を検討する必要がある。これまでの知見からするとバイオレメディエーションは漂流油等の機械的な回収が終了してなお残っている付着油の処理に適用される可能性が最も高いと考えられる。
また、油の浄化に関して、自然の波や潮汐の果たす役割(力)には大きいものがあり、自然浄化(放置して置くこと)も、除去には時間を要するものの、環境保全の観点からむしろ最善である場合があることも認識しておく必要がある。
なお、バイオレメディエーションの適用に当たっては、自治体や漁業協同組合等地元関係者の理解と協力が必要であり、この点も踏まえて想定される適用場所を検討する。
留意点2
汚染油の状況、水質、生物の生育状況、波の状況や地形等想定適用場所の現況を把握する。
油汚染の状況については、生物分解が行われる場所及びその周辺での汚染の分布、濃度、成分構成等を調査する。
水質調査は、水温、栄養塩の濃度など現場での石油分解微生物の生育、生物分解に関連する項目を中心に調査する。
生物の生育状況は、有用生物、石油分解微生物について調査する。
その他、波の状況、潮の干満や地形についても調査する。
(解説)
想定適用場所における油汚染の状況や自然条件等の調査は、バイオレメディエーションの使用適否の検討(留意点4)に不可欠なものであり、またその後の各種試験や実際の適用時の条件設定にとっても重要である。以下に主な調査事項を示す。
ア)油汚染の状況
油汚染の状況の調査は、特に有効性の観点から重要である。漂流油は、風雨にさらされ、波にもまれ、(場合によっては油処理剤の散布を受けて)、低沸点成分の蒸発、分解、海水の混入など流出油とは形態や正常を異にしていることが普通である。また、漂流後の油も、日射、気温の変化、砂・ごみ等の付着等により、時間経過とともに、刻―刻形態や性情が変化している。
汚染油の分布、濃度、成分構成など油汚染の状況を調査することは、油による今後の環境影響の恐れを把握するためのみならず、石油分解微生物による生物分解の受けやすさの程度を知る上で極めて重要である。汚染油の成分の多くが生物難分解性である場合や濃度が高すぎる場合には生物分解の可能性は期待できない。