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造者は米国で許可をえた事実を盾に成分情報を企業機密として日本に明示したがらないために日米間の障壁が発生する恐れがある。

 

3.2.3 制度的制約

(1)国家的な緊急時計画

平成9年12月19日閣議決定された「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画について」は「1月に発生したナホトカ号流出油災害の教訓等を踏まえて」従来の計画を総合的に点検したと運輸大臣が発言している。

「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画について」では第5節に油防除対策の実施の項目に?@排出防除措置、?A拡散防止措置、?B回収措置、?C化学的処理があげられており、これは基本的に旧来から変わっていない。生物学的処理はここに含まれていない。したがってナホトカ号のような災害が再び起きた場合、我が国政府は基本的に生物学的処理を実施することにはならないのである。

(2)環境庁の政策

平成9年3月環境庁水質保全局はナホトカ号事件を踏まえて「油処理剤及びバイオレメディエーション技術の検討調査報告書」を発行した。報告書では、「海洋での泊流出事故はその影響が海岸線の全面に及ぶことが多く、完全な浄化を目指した場合には物理的な除去のみでは困難であることから、栄養剤の散布等によるバイオレメディエーション技術の適用を有効とする意見があり、(中略)バイオレメディエーション技術について実証的情報が不足している現状を鑑みると、この技術を何らの予備的実験による検証無しに海岸の油汚染現場に適用しても有効性を発揮するとは限らず、かえって環境に対する悪影響が発生する可能性があることから、適用に先立ち段階的に調査を実施し、それぞれの段階で効果があることの確認と環境影響が小さいことの確認が必要である。」そして「このような現場へのバイオレメディエーション技術の適用にいたる過程に関しては、環境保全に責任のある機関が、適切な使用時機、実施プロセス等の一般則を明らかにしたガイドラインを作成し、示すことが必要である。」とする認識を示している。
環境庁のバイオレメディエーションの効力に対する基本的な認識は「バイオレメディエーションは漂流油等の機械的な回収が終了してなお残っている付着油の処理に適用される可能性が最も高い」と考えており、一方「油の浄化に関して、自然の波や潮汐の果たす役割(力)には大きいものがあり、自然浄化(放置して置くこと)も、除去には時間を要するものの、環境保全の観点からなしろ最善である場合があることも認識しておく必要がある。」とこれに対する留保も示している。バイオレメディエーション技術の適用にあたって、これに先立ち、環境保全の観点から検討することが望ましい事項の内容と手順を次に示している。海岸の油汚染へのバイオレメディエーション技術の適用に当たっての留意点の検討結果は次の通りである。

 

 

 

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