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反面、農作物における有機栽培の拡大や、微生物による生ゴミの処理の普及、等は有用微生物の働きをポジティブに評価してきた現象である。

このように「微生物の活用」には心理的抵抗感があり、これを払拭するには容易ではない。その土地に存在しない(或いは希薄な)「微生物」の持ち込み(バイオ・オーギュメンテーション)の理解には相当な心理的ハードルが存在している。

しかしその土地に存在する「微生物の活性化」は比較的ハードルが低いことは、前記心理的要因から明らかである。

 

3.2.2 法的制約

先に述べたように海洋汚染に対する生物学的環境修復に対して、我が国では明確な法的指針が示されていない。1997年2月水産庁と環境庁が連名で出した通達「ナホトカ号流出事故の流出油及び漂着油に対する処理剤等の利用について」では次の内容となっている。

「今回の重油流出事故の流出油、漂着油に対し、油処理剤及び、バイオ技術などの利用が検討されているが、これらを利用する場合には、国、地方自治体及び漁業者等はその効果及び生物、生態系等への副次的影響を考慮し、当面次の方向で対応することが望ましい。?@油処理剤の使用について(略)、?Aバイオ技術等の利用について(1)バイオ技術等の活用としては、例えば、石油を分解する微生物を活性化させる栄養剤を使用する方法や栄養剤とともに微生物を散布する方法がある。現場の状況によっては、その有効性が異なり、また、使用方法によっては、栄養剤が窒素、燐酸を含むものであることから、海水の豊営養化が生ずる可能性や微生物の散布による海洋生態系に与える影響の可能性も考慮する必要がある。(2)このため、今後とも、これらの調査・研究を推進して、その技術的有効性や環境への影響等を明らかにするとともに、実際の使用に当たっては地元漁業協同組合及び自治体等の理解と協力を得ていく必要があると考える」としている。

通達の趣旨からはバイオレメディエーションを実施すべきか実施してはいけないのか明確でない。京都府香住町でバイオレメディエーションを試験的に実施した企業関係者によれば環境庁は「バイオレメディエーションを実施してはいけないという法的根拠はない」が自粛せよという行政指導を受けたといわれる。

法的制約はないものの日米両国が1997年3月「日米コモンアジェンダ」でバイオレメディエーションをふくむ海洋汚染環境修復に関する技術共有を確認したことは夫きな意味をもっている。バイオレメディエーションのための製剤を輸入するにあたっては製剤に含まれる成分分析情報を明示し、厚生省の認可に抵触しないことが必要である。往々にして米国のバイオレメディエーション製

 

 

 

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