第3章 生物学的環境修復導入に対する社会的・法的・制度的制約、文化的背景と課題の国際比較
3.1 米国の生物学的環境修復導入に対する社会的・法的・制度的制約
3.1.1. バイオレメディエーションに関する米国の法的枠組み
米国におけるバイオレメディエーションの決定手順を理解するには、まず、流出対応のための基本法の構造を十分知る必要がある。連邦政府の水清浄法1は、石油および危険物質の流出に対応するために「安全かつ有効な」対策を実施することを求めている。対策に関する意思決定は、汚染を起こした民間主体を始め、連邦政府、州および地方政府機関間の分担責任で行うことになっている。
石油流出に対応する政府の主任係官は、現地コーディネータ(On Scene Coordinator: OSC)である。危険物質放出の場合には改善策プロジェクト・マネージャ(Remedial Project Manager:RPM)と呼ばれる。連邦現地コーディネータ(FOSC)は、石油流出に対する最終的な意思決定権限を持つ政府係官である。しかし、多くの州は、少量の流出への対応で指揮を執るOSCも置いている。全ての対応は、実施主体が連邦政府、州、または民間主体のどこかに係わらず、全国不測事態対応計画(National Contigency Plan:NCP)2と呼ばれる全体を支配する連邦規制に従い、それに適合しなければならない。このNCPはバイオレメディエーションおよび他の流出対応手法のための全体的な法的・制度的枠組みを提供するものである。
独自の流出対応プログラムを制定している州もあり、制定してない州もある。一般に、州では連邦法より厳しい州法に基づく追加の要求事項または制限を課す場合がある。このように、バイオレメディエーションの使用能力は場所と管轄主体によって異なる。連邦政府、州および地方機関は、以下に述べるように一連のチームまたは委員会によってその活動と権限を調整する。
(1)全国対応チーム(NRT)
全国レベルでの計画および調整は、全国対応チーム(National Response Team:NRT)と呼ばれる連邦係官のグループによって行われる。このNRTは、15の異なる連邦省/庁からの代表で構成される委員会である3。NRTの役割の一つは、バイオレメディエーションなどの放出に対応する方法を評価することである。
133 U.S.C.(合衆国法典第33巻)1321章。
240 C.F.R.(連邦規制基準第40巻)パート300
3全国対応チーム(NRT)は、米国沿岸警備隊:環境保護庁:運輸省、エネルギー省、労働省、保険社会福祉省、内務省、法務省、国防省、農務省および商務省:連邦緊急対策庁:原子力規制委員会:および全般業務管理局からの代表で構成される。