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(NOV:a Notice Of Violation)を発した。エクソンはもっと情報の風通しをよくすれば、何も法的処置をとらなくても問題を解決できると不満をもらした。クリーンアップシーズンが終わると、その年のバイオレメディエーションの効果について詳細な評価が行われた。慎重な意見もあったが、肯定的な意見が支配的で、やめるべきということにはならず、別に行われた室内実験でもはっきりと効果がみられたこともあり、翌年も続けることになった。
EPAの1990年のバイオレメディエーションプログラムが2月に公表された。もし有望なコマーシャルベースの処理案があれば全国環境技術適用会社(NETAC:National Environmental Technology Application Corporation)に提出されることになった。この法人はEPAとピッツバーグ大学が共同出資するベンチャー企業が設立した機関である。
提案された技術と現場での実験との間の調整役はコネチカットのクロトンにある浴岸警備隊の研究開発センターが担当した。また同じ月にカリフォルニアのニューポート・ビーチで海岸汚染除去技術のワークショップが開催され、バイオレメディエーションが重要な選択肢であること、栄養剤は有望であること、自然への影響が少ない手法として採用すべきなどの好意的な合意文書が作成された。

にもかかわらず2年目の進行はすんなりとは行かなかった。地元アラスカ州が効果について疑間を呈したからである。実験方法を変え、承認の手続を変えるよう要求した。そこでアラスカRRTの共同議長のボードンはメンバーに再承認の手続の必要性について賛否を求めた。ADECは適用地域の拡大に批判的で再承認が必要という意見であり、OSCのスチーブも前年のは条件付きの暫定的なもので広域の適用を認めたわけではないと主張した。結局ボードンはADECの考えが変わらない以上、効果と必要性がはっきりしない限り、バイオレメディエーションは使用すべきではないと結論した。この膠着状態を打開するため、3月30日にアンカレッジに約30人の連邦、州、エクソンらの関係者が集まった。会議では意思決定ルートがはっきりしないことも問題になった。
ADECのコミッショナーはバイオレメディエーションが無制限に拡大されていくことを恐れており、真っ向から反対なのではないとの立場を述べ、5月1日の除去作業開始日までには問題を解決したいとした。結局、使用手続をはっきりさせることで事態が好転するきざしが見られた。だが、ながびく議論紛争は逆に地元企業や環境保護グループ、市民グループ、自治体の懸念を呼び起こすことになった。そこで、前年よりも総合的で広域的なモニタリングが必要ということになりそのための計画がエクソンから提案された。こうして5月1日ADECは厳格な手順と綿密なモニタリングという条件付でバイオレメディエーションの適用を認めた。

 

(4)アラスカの地域住民助言会議(RCAC)

この事故を契機にアラスカでは地域住民の意見を石油などの汚染対策に反映する組織として地域住民助言会議(RCAC:Regional Citizens'Advisory Council)が組織された。この組織は企業に活動資金を頼りながら、独立性と査察権をもった独特の組織であるが、設立後5年以上たって、問題点も出てきている。我が国にそのまま適用できるものではないが、バイオレメディエーションの住民コンセンサス形成に参考になる部分もあるので紹介する。

 

 

 

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