2.2 事例に見る重油流出事故時の生物学的環境修復に対する関係者の行動
2.2.1 アラスカの場合
1989年3月24日にアラスカ湾で起きたエクソン・バルディーズ号の座礁事故では410,000 klもの大量の油が流出し、沿岸部に漂着したが、その処理方法の一つに手作業、物理的処理法(ステーム洗浄、高圧水、高温水洗浄、機械による堆積物除去や耕転など)、化学的処理法(分散剤の散布、海岸洗浄剤)と並んでバイオレメディエーションが採用された。そのほとんどは現場での栄養剤の付与であったが、酵素添加や微生物添加の室内実験も行われた。栄養剤の添加は?@実験・モニタリング計画により室内実験、現場での実験などで効果を評価したあと、大規模な適用が行われるなどの手順を踏んで行われたこと、?A冬季は除去作業も困難で、微生物の活動も活発でないことから、4年間にわたり、夏期に限定して行われたこと、?B除去の経費はEPAとエクソン社が分担したことなどの特徴がある。
このバイオレメディエーションプロジェクトについては、詳細な報告書もあり、その一部が翻訳されてもいるので、ここでは採用の経緯や地域との関連する事項について紹介する。
(1)実験の開始
事故後、EPA(米環境保護庁)はそれまでのバイオレメディエーションの小規模な研究を発展させる好機と考え、4月下旬にはプラッドホウ(Prudhoe)湾の汚染海岸に実験サイトを探しはじめ、5月31日に