(3)国
バイオレメディエーションに対して、環境庁と水産庁は2月7日の連絡で慎重な姿勢を見せた。特に、民間業者が汚染海域において「勝手に」バイオレメディエーションを実施することに対しては、関係省庁は、技術的に未解明という理由で、明確に不快の念を示したといわれる。しかしその後、環境庁を中心として、バイオレメディエーションの実施手順を検討するなどの変化が見られる。海外の動向も踏まえつつ、方向としては、バイオレメディエーションの実践的可能性を検証する方向へと変化しつつある。
(4)民間業者
事故発生以後、国内および海外から様々の民間業者が、重油汚染回復のためということでバイオ製剤を被災現場に持ち込もうとした。大半は、無償で実験のための材料を提供するという形であった。また、重油汚染現場でのバイオ製剤使用に対して公的費用負担をしたのは、京都府網野町だけである。
業者の中には、バイオ製剤の正しい用法を知らないケースもあり、非科学的な薬剤散布により関係者の不信を招いたこともある。
(5)マスコミ
事故発生直後から、被災現場には多数の報道関係者が出入りしていたが、新聞・テレビなどでは海外のバイオレメディエーション事例が数回報じられた。ただし、報道の仕方が、バイオは「万能薬」、あるいは一部の学者のコメントをもとに「まだ実用化の段階に達した技術ではない」といった表現で、かならずしも冷静な判断材料を提供したとは言えない。
(6)研究機関
複数の大学・研究機関がバイオレメディエーション実験の必要性を主張したが、実際は、地元漁協や自治体との調整がうまくいかず、発災後にバイオレメディエーション実験実施にまでいたったのはごく少数の研究機関に限られる。現在でも、実用技術としてバイオレメディエーションを扱える機関は、日本にはまだないといってよい。
(7)市民・ボランティア
ナホトカ号重油流出後の早い時点で、インターネットでの情報交流が盛んであった。主な内容は、被害状況やボランティア情報などであったが、いくつかは、バイオレメディエーションの可能性について事例紹介を行っている。しかし日本では利用実績が少ないため、 一般市民の間では大きな盛り上りは見られなかった。