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1.4.3 金沢大学における培養実験

金沢大学理学部の本浄高治教授らは、事故後、海岸に漂着した重油や海水、砂などを採取して培養している。その結果、アースロバクター属の細菌数種の存在が確認でき、この細菌を重油の主成分の炭化水素を用いた培養液で生育させたところ、炭化水素を少なくとも50%以上分解することが分かった。詳細は5月末の分析化学討論会(小樽市)で発表されるというが、細菌が現場の浄化に重要な役割を演じていることと、今後のバイオレメディエーションの可能性を伺わせるものである。

 

1.5 関係者の行動分析

ナホトカ号重油流出事故に対して、数箇所でバイオレメディエーション実験が実施されたが、成果はまちまちであった。ここで、主な関係者のとった行動をまとめてみよう。

 

(1)漁業協同組合

今回、バイオレメディエーション実験を行ったのは兵庫県香住町柴山港漁協および京都府網野町の浜詰浦漁協のみである。それにたいして福井県、石川県など他の漁協は一切バイオレメディエーションはやらなかった。

バイオレメディエーション実験実施の判断は、基本的には漁協組合長に任されているといってよい。また、香住町や網野町は松葉カニなど沖合い漁業が主体である。それに対し、ナホトカの船首が漂着した福井県三国町の雄島漁協は、組合員の大半が海女であり海草・魚介類など海岸での操業が中心であることにより、重油汚染の影響が深刻であったと同時にバイオレメディエーションによるマイナスの影響を受ける可能性も大きい。

また、香住町の場合は、県や海上保安暑が実験に立会い、大学などの専門機関が協力するなど周囲の環境も整っていた。

 

(2)県及び市町村

事故直後は、現場対応に追われ、バイオレメディエーションについては日本では確立された技術でないという理由で、一様に消極的対応であった。しかし次第に、現地漁協や民間業者からの実施要求を追認する形で、兵庫県庁、網野町などは、バイオレメディエーション実験を行っている。また、当初は、バイオレメディエーションに対しては慎重だった福井県庁も福井県立大学にバイオ実験(室内レベル)を委託するなど、変化が出ている。

市町村は県を、県は国の動きを待つということが多くあるが、以下にあげる国の姿勢の変化も反映されていると思われる。

 

 

 

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