?A米国及びシンガポール重油流出事故時の生物学的環境修復に対する関係者の行動・意見分析
(1)調査研究の実施内容
米国で重油流出事故発生時に環境修復に対処する国やアラスカ州などの行政機関、環境保護機関や実際に環境修復に従事する企業等の関係者に対して、生物学的環境修復手法(バイオレメディエーション)の現状と評価、バルディーズ号事故後の住民対応の状況、住民の認識、評価技術への取り組み、ガイドラインの整備状況などを明らかにするため、現地(アラスカ州ジュノー市、ワシントンD.C.、テキサス州コーパウクリスティ市等)調査、文献調査および米国調査機関への委託調査などを実施した。また、昨年秋に発生した、シンガポールでの原油流出事故の状況と生物学的環境修復に対する実状や考え方を把握するため、一部当初計画を変更して現地調査を実施し、汚染地域の視察と海難防止協会、海洋生物研究者、報道機関、自然保護団体などへのヒアリング調査を実施した。
(2)調査研究の結果
米国においては、土壌汚染対策を中心に数多くの処理業者によって生物学的環境修復手法(バイオレメディエーション)が適用されている。そのための処理剤などは基準を満たしたものが登録され、データベース化されているが、その数はそれほど多くはない。近年、バイオレメディエーション適用事例のケーススタディも行われている。全体的には、流出油に対するバイオレメディエーションの効果については栄養剤などを供与して微生物による分解促進する方法では有意であるとする意見が多いが、微生物そのものを導入する方法については、疑問視する意見もある。特に、洋上での処理については効果測定が困難なこともあって、EPA関係者の中で否定的な意見が聞かれた。米国はバイオレメディエーションの評価プロジェクトを始めており、今後は評価施設の設置や標準化などが進むと思われる。
その一方で、バイオレメディエーションに対する住民の理解を得るための広報活動も国、地域レベルで行われており、ガイドラインも整備されている。その手法や内容は我が国においても大いに参考になることがわかった。
また、アラスカ州では石油汚染事故対策などに住民の意見を反映するための組織が常設されている。これらは石油精製や輸送会社の資金で運営されているが、独立性を保つための工夫もなされている。その活動には課題もあり我が国にそのまま適用できるわけではないが、参考にすべき試みである。
シンガポールの流出油事故は一部の島々を直撃したが、大きな観光地や本島沿岸部には漂流し