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米国ではアラスカ州の環境保護局(ADEC)のシュリヒティング嬢(Sally Schligting)やコラジ(Ed Collazzi)、マトソン(Bob Mattson)、マンソン(Diane Munson)諸氏に議論に参加していただいた。EPAでは油汚染計画(Oil spill Program)のオリベイラ(Beatriz M.Oriveira)氏をはじめ多数のひとの意見をきくことができた。合わせて感謝したい。

 

7. 調査結果の概要

?@日本海重油流出事故時の生物学的環境修復に対する関係者の行動分析

(1)調査研究の実施内容

ナホトカ号重油流出事故後に、生物学的環境修復手法に関して、どのような検討や判断がなされたか、実験を含め適用事例のある場合にはその過程や実施状況を把握するため、現地(福井県、京都府、兵庫県)に赴き現場視察と県、町、漁協、観光施設等の関係者へのヒアリングを行ない、ナホトカ号事故後の対応、生物学的環境修復に対する認識や課題などを調査した。また、生物学的環境修復用の処理剤を販売している業者にもヒアリングを行なった。なお、これらの調査の一部は外部に委託して実施した。

調査にあたっては、まず現地で作業部会を2日間に亙って開催した。このため当初2回開催する予定であった作業部会はこの1回のみとし、最終結果を検討するための1回は部会構成員が委員会の委員でもあることから、委員会で検討審議することにした。これらの調査結果は委員会に報告検討した。

 

(2)調査研究の結果

ナホトカ号の事故以後、生物学的環境修復手法に対し、内外からいくつかの提案があったが、その多くは県や国の指導がない、経費がでない、住民の間に不安があるということで実施されなかった。しかしにごくわずかではあるが、現場での処理が試みられた。これらはいずれも小規模な範囲で現場関係者の独自の判断と責任で行われた。自治体の費用で賄われたのは1件、他は処理剤業者の行為で試行的に行われた。一方で、この事故を契機に生物学的環境修復手法に関する国や研究者の関心が高まり、地域住民の了解のもとに処理効果の有無や効果の程度を測定する実験が行われている。これら生物学的環境修復手法の適用を決定的にしたのは、地域の中の推進者の存在と業者や研究者との信頼関係である。推進者は自治体の職員であったり、漁協関係者であったりさまざまである。彼らは生物学的修復手法への理解が必ずしもの深いとは言えないが、試行してみるだけの価値はあると判断して容認した場合が多い。試行の結果の評価は明確ではないが、否定的であったり、周辺環境に逆効果であったという事例はなかった。

このように我が国でも生物学的環境修復手法の試行例や実験例が出始めていることは、画期的といえるが、その適用までの手順や住民の理解を得る方法などはまちまちであり、そのためのガイドライン的なものの作成の必要性のあることがわかった。

 

 

 

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