序章 本調査研究事業のフレームワーク
1. 本調査研究事業の目的
海洋における大規模重油流出事故後の環境修復において、米国などで実用化されている海洋微生物を利用した生物学的環境修復手法(バイオレメディエーション)の有効性が指摘されている。
しかし、わが国においては、生物学的環境修復手法に対する社会的コンセンサスが確立されていないために、本格的な導入が困難な状況にある。他方、タンカーなどによる海洋汚染対策についてはアジア太平洋沿岸諸国において、ナホトカ号の教訓から国際的に汚染対策に関する情報の共有を図る気運が高まりつつある。本調査研究事業はこのような状況をふまえ、財団法人日本財団の補助を受けて平成9年度に実施したもので、将来の海洋汚染の発生において、発生時の対応、及び汚染された場合の生物学的環境修復手法を導入する際に必要な社会的コンセンサスの形成を図るために、国内の関係者の意見・行動を分析するとともに、国際比較分析を行うことによって、コンセンサス形成条件を明らかにすることにより、今後も発生の恐れのある海洋汚染事故に対する緊急事態での環境修復実施に寄与することを目的としている。
2. 本調査研究事業の内容
?@日本海重油流出事故時の生物学的環境修復に対する関係者の行動分析
ナホトカ号重油流出事故時における生物学的環境修復に対する対応を、国・自治体担当官、漁協、ボランティア他の関係者にインタビューを行い、さらに文献調査などを補って総合化を図った。
a. 調査地域
福井県、京都府、その他
b. 調査対象
県、市町村、漁協、観光協会、ボランティア団体
c. 調査項目
・ナホトカ号事故後の対応
・生物学的環境修復に対する認識
・生物学処理と抱いている自然感とのギャップ
・汚染環境修復のために何が課題と考えたか
・その他
?A米国重油流出事故時の生物学的環境修復に対する関係者の行動分析
米国において重油流出事故発生時に環境修復に対処する国・自治体などの行政機関、環境保護関連機関や実際に環境修復に従事する企業等の関係者に対する調査を行って、生物学的環境修復に対する対応に重点をあてた行動分析を行った。