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5.代替手段の現状評価および課題

リバラスト代替手段としては、これまでに、無害証明(安全証明),フィルタリング,熱処理,電気処理,紫外線処理,音波処理,磁気処理,化学的処理(有機塩素系農薬・ホルムアルデヒド,次亜塩素酸ソーダ,過酸化水素,オゾン)が取りあげられ検討されてきた。

このうち、無害証明に関しては、海洋に有害生物が存在している以上、たとえ多くの船舶に無害証明を発給できたとしても根本的な解決策とはならない。また、他の方法のうち、音波処理と磁気処理については、海洋生物殺滅効果が未確認の状態であり、実用化の検討を進めるには、時間的,経費的なリスクが大きい。

これら以外のフィルタリング,熱処理・電気処理,紫外線処理,化学的処理に関しては、海洋生物の殺滅あるいは排除効果が期待できることから、代替手段候補技術と位置づけられる。しかし、いずれの方法も課題・問題点を持っており、現状では最良な方法を特定することはできない。なお、化学的処理の中では、本調査研究の実験対象としたオゾンが、海洋生物殺滅効果および特性の面で他の化学物質よりも優れており、今後の調査研究対象として注目する価値があると思われる。

代替手段候補技術の今後解決すべき主要な課題・問題点は、フィルタリングが大量な海水の処理に適用できる継続的な逆洗技術の確立、熱処理が実効性のある温度の検討と効率的な温度上昇方法および船体腐食対策、電気処理が海洋生物殺滅効果向上技術の検討および二次汚染物質生成の検証と対策、紫外線処理が効率向上技術による大量海水処理への適応、オゾン処理が船体腐食対策である。なお、フィルタリングによる継続的な逆洗技術が確立されれば、他の方法の前処理技術としての活用も考えられる。このフィルタリングのように、列記した各方法についても課題・問題点が解決されれば、他の方法と組み合わせることによって、より効率的で安全な代替手段になる可能性がある。

以上、代替手段各種の現状評価と課題をまとめたが、いずれにしても水域間の移植を最小限にとどめるべき「好ましくない水生生物と病原体」の認識を統一する必要がある。その理由は、生物の種類および生活史や成長段階によって、大きさはもとより代替手段の処理圧に対する耐性が大きく異なるからである。この統一認識が得られれば、殺滅あるいは排除が可能な各方法の能力(出力,濃度等)を明確にすることができ、効果および経済両面で優れた方法および組み合わせの選定につながるものと考える。

 

 

 

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