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すると同時に、速やかに無害な状態に分解される必要がある。

オゾンそのものの海水中での分解は、非常に速く、5.3秒後で約50%,30秒後で100%といわれている2)。 また、オゾンは、海水中の臭素等の陰イオンが反応してオゾンと同様の毒性を持つオキシダントを形成する。オキシダントの動植物プランクトンの殺滅濃度に近い1mg/L前後の分解速度に関しては、次の結果がある。本実験では、0.84mg/Lが24時間後に約60%が分解、既存の実験3)では、37時間後に1.76mg/Lが63.5%,0.80mg/Lが77.5%、0.52mg/Lが100%分解される。

これらオゾンやオキンダントの分解性は、オゾン注入時のオキシダントが1mg/L程度であれば、数日で無害状態になることを示しており、オゾン処理は実施の方法によっては二次汚染の心配の無い方法になりうると考えられる。

 

(4)オゾンの鉄腐食性

化学薬品処理は、船体の腐食を進める方法であっては好ましくない。

海水中にオゾンを注入した場合の鉄腐食性に関する実験データはない。ただし、オゾンは、白金族を除いて全ての金属を酸化することが知られており2)、鉄を腐食させることは明らかで、海水中での酸化・腐食力に関する実験の必要性がある。なお、鉄は炭素を除いてクロムと合金すると容易には酸化されなくなり、25%のクロムを含むフェロクロムの利用は、耐オゾン,耐酸性を要する化学装置用として特許化されている。

オゾンが前述したように速やかに分解されること、また、耐オゾン,耐酸性の技術が存在することは、オゾンの海水中における鉄腐食性実験の結果によってはリバラスト代替手段として適用できる可能性があると思われる。

 

(5)リバラスト代替手段としての有用性

以上の検討結果から、鉄腐食性等の課題はあるものの、オゾン処理は、リバラスト代替手段として、今後、調査研究を進める価値は充分にあると思われる。

特に、他の化学的処理との比較においては、他の方法が何らかのかたちで多量の薬品を船内あるいは港湾に貯蔵しておく必要があるのに対し、オゾンは発生器でオゾンを生産しパイプやバラストタンクに注入する方法となるため、貯蔵の必要がない。他の化学的処理に関する薬品貯蔵の問題は、実用化を困難にする1要因である。オゾン処理には、この困難な問題は存在しないことになり、また、海洋生物殺滅能力は、他の薬品処理に比べて優れている可能性が高い。したがって、現時点では、化学的処理の中で最も有用と評価される。

 

1)(社)日本海難防止協会(1993):平成4年度バラスト水による有害プランクトン伝播対策の調査研究報告書

2)杉光英俊(1996):オゾンの基礎と応用

3)磯野良介(1993):シロギス卵・稚魚の生残に及ぼす海水オゾン処理の影響,日本水産学誌,59(9)

 

 

 

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