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(2)化学薬品処理

人体への影響や周辺環境への影響等の薬品特性の検討により、実用化の検討に値する薬品として、次亜塩素酸ソーダ,過酸化水素,ホルムアルデヒド,MDBA(有機塩素系農薬),オゾンを選定している。その中で、オゾンに関しては、当時のオゾン発生器開発状況から、大がかりな発生器が必要と判断され、当面は検討対象から除くとしている。

他の4薬品に関する調査研究結果は、次のようにまとめられる。なお、検討対象生物は、全て有害プランクトン(Alexandrium属)である。

・MDBA(有機塩素系農薬)には、殺滅効果が無い。

・単離した遊泳細胞の殺滅濃度は、過酸化水素が1 mg/L,次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度、以下同じ)が1 mg/Lで、ホルムアルデヒドが10 mg/Lである。

・単離したシストの殺滅濃度は、3薬品共に30mg/Lである。

・薬品の分解・消費がおこるセディメント中シストの殺滅濃度は、ホルムアルデヒドが10mg/L,過酸化水素が30mg/L以上・次亜塩素酸ソーダが100mg/L以上である。

・使用時に問題となる鉄腐食性と人体への毒性の評価は、過酸化水素が最も優れており、ホルムアルデヒドが最も劣っている。

・以上の結果から、現時点においては過酸化水素の50mg/Lが、優れた薬品と濃度である。

・過酸化水素の購入費用は、バラスト水1万トン当たりで22万円である。

・処理方法は、薬品を事前に購入し、港湾に貯蔵しておき、バラスト水漲水時に注入,薬品製造装置を港湾に設置して作動・注入,船舶に薬品貯蔵容器を設置して必要時に注する3方法が考えられる。

・二次汚染,分解性,船体への影響(鉄腐食性)に関する十分な検討が必要である。

・化学薬品処理の実施には、SOLAS条約とMARPOL73/78条約の規定を満たす必要がある。

 

 

 

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