このように放送のディジタル化は行政サイドによる「電波帯域有効活用の促進」という意味合いもあり、今後の動向把握が必要である。
●一番組―複数チャンネル利用
チャンネルが増えた場合、一つの放送事業者が複数のチャンネルを持つ可能性もある。利用法としては同じ映画を各チャンネル開始時間を15分程度ずらして放映、視聴者の待ち時間を15分以内にする「ニア・ビデオ・オン・デマンド(NVOD)」や、スポーツ競技を複数のアングルで撮影し複数チャンネルで放送し、視聴者にアップやロングなどを自由に選択してもらう「マルチアングル番組」が考えられる。
これらに関しては放送行政におけるいわゆる「マスコミ集中排除原則」の緩和などの制度的環境整備が必要と思われる。
●映像品質の多様化
米国において、次世代テレビの表示方式に従来のインタレース方式に代わりプログレッシブ方式を採用すべきとの提案が、コンピュータ業界2からなされ、既存の放送業界との対立したものの複数の方式が併存する形で決着を見た。
わが国においてもディジタル放送の方式が統一されずいくつかの方式が併存すれば、将来テレビ受像機やディジタル放送受信機の対応方式に応じて「インタレース」や「プログレッシブ」で切り替えて受信したりするようなしくみが必要となる。また、テレビ画面のサイズにあわせて、居間では「大画面で高精細」表示や寝室では「小画面で低解像度」表示を選択するような、テレビ受像機の性能仕様にあわせた視聴スタイルが普及する可能性もある。
●有料放送の可能性
ディジタル放送の場合、放送を送信する際にディジタル情報を暗号化することで、特定の視聴者を対象にした放送も可能である。たとえば公共放送において聴取料を支払った人のみが見ることができる仕組みをつくることも考えられる。
一方で、「特定利用者対象の放送」という考え方は「テレビ放送の公共性」