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以降、基本的にはMaykut & Untersteinerの数値モデルを踏襲したものが熱力学的数値モデルの主流となり、改良を加えられつつ発展した。Semtner(1976)は、実際の海氷厚さの予測に使用する目的で、Maykut & Untersteinerのモデルを簡略化したものを提案し、それでも北極海の多年氷についての計算がMaykut & Untersteinerと大きな違いがないことを示した。この簡略化とは、Maykut & Untersteinerが用いた層の数を1/10程度にすること、海氷の密度、熱伝導率、比熱を一定値とすること、等である。Semtnerのモデルは、計算の効率と実用上の精度の二つの面での成果を狙ったものであったが、その目的は十分達成されていた。

1970年代後半になって、熱力学的モデルは力学的モデルと結合し、その運動や分布をシミュレートすることが可能となった。一般に工学的な海氷モデルにとってこのことは手法の進歩ということも出来よう。何故なら、従来の数値モデルの実用上の意味は北極海など常に海氷が存在する場所の局所的な厚さの変化のみを予測することであったのに対し、新しいモデルは広がりや運動をも予測することで、流動し、生成あるいは消滅する海氷を扱えるようになったからである。またそのために、実際に分布する海氷全てを考えることで、地球規模の気候学的および熱力学的計算が可能となるという意味も持つ。このようなモデルは、Parkinson & Washington(1979)によるものとHibler(1979)によるものとに代表される。Washington et al. (1976)は、湿度や雲量などの気象的条件から大気と海氷の間の熱交換量を求める計算式を導いた。Parkinson & Washingtonはその結果を用いて、北極、南極それぞれの全域に渡る海氷の分布を予測計算そるモデルを提案した。前述のように、従来のモデルと異なるのは海域全体の海氷分布の変化がシミュレート出来ることである。北極および南極の海氷は海氷というよりは比較的定着氷の性質を持つので、

 

 

 

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