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・海氷は無限板と仮定し、垂直方向の1次元的な熱交換を考える。

・大気との境界、積雪中、氷中、海水との境界、のそれぞれにおける熱交換を定式化し、それらを境界での熱流束の連続条件により連立させる。

・考えられる最小厚さの間隔で海氷(積雪含む)を垂直に区切り、隣り合う二層の間で熱伝導を考える。その際、海氷の含む塩分量は層の位置する深さにより異なる。

・大気のとの境界における太陽から及び大気からの熱放射は、気候学的に見積られていた量を使用し、また海氷の密度、熱伝導率、比熱は塩分量の関数であるとする。

 

例えば、海氷表面においては次のような熱の出入りを考える(負号は流出)。

 

RL  長波長放射熱

(1-α)RS  短長波長放射熱

Rout  表面からの放射熱

FS  大気からの(乱流)伝達熱

FL  蒸発・昇華のときの吸収する潜熱

FC  水中あるいは雪中からの伝導熱

 

ここで、αは表面での反射率(アルベドー)。長波長の放射熱は太陽からの放射熱のうちいったん大気に吸収されてから伝わる熱で、見かけ上大気からの放射ということもできる。これに対して短波長の放射熱は太陽から直接到達するものなので、性質としてその一部は入射せずに反射する。これらにより上面境界での熱平衡式は以下のように書き表される。

086-1.gif

ここで、TSは表面温度であり、海氷、積雪内部は、熱伝導率等が厚さによって変化する多層構造を仮定している。いわばこれは必然的な記述であるが、これだけ複雑な要因を含むモデル化は、前述のように計算機の発達を待たねばならなかった。このモデルは厚さの変化のみを対象とし、かつ海氷の広がりを予測するという目的にはまだ意味は薄いが、年間を通しての北極海の多年氷の厚さの観測結果と比較して、良いモデルであると言うことができた。

 

 

 

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