ここでは力学的な数値計算はせず、ただ全体的な漂流の影響のみをランドサット衛星からの観測を基にして計算に付け足している。このモデルはMaykut & Untersteinerの式(5.2.4)の各項を理論的に評価しようという意味もあり、その記述は現在気象庁が用いている海氷予測モデルのも取り入れられている。
またHibler(1979)は、力学的な海氷の流動を扱ったモデル化の中で、力学的モデルに取り込む形で熱力学的な影響を考慮している。このモデルによると、力学的モデルで仮定した海氷の連続条件を記述する式に、海氷の量のパラメータである厚さ、密接度の二つの影響を表す項を含ませて計算しており、この方法は力学的モデルの結合のしかたの一つを提案していることになる。Hiblerはこのモデルを用いて北極海の多年氷について年間を通しての計算を行い、海氷の季節的な変化を再現することに成功した。
5.3 海氷数値モデル
ここでは、今まで海氷の力学的変動の数値解析モデルとして、多く用いられてきた連続体モデルであるHibler(1979)のviscous-plasticモデルと、海氷運動を個々の円盤運動の集合として取り扱うSavage(1992)の個別要素モデル及びRheem et al. (1997)のDistributed Mass / Discrete Floeモデルについて海氷の内部応力の取り扱い方法を中心に簡略に述べる。