Bootstrapアルゴリズムを使用する場合、多年氷の存在しない海域では19GHz垂直偏波と37GHz垂直偏波による輝度温度の散布図を基にするのが適当とされている。しかし、陸域、海域すべての値を含む場合(図3.17(a))は、図3.16(a)のような基本的な考え方に近い形をしているようにみえるが、陸域のデータを削除した場合(図3.17(b)〜(d)、(a)と(b)は共に2/20/94)には海氷域であるP-Qの部分が非常に小さく、時にはない場合もある。さらに、これらの値は水蒸気等の影響も含まれたものであるために、結局はその海氷密接度の分布は単周波のみを使用した場合と近い結果になることが予想される。
以下に、今回使用した代表的輝度温度の値を示す。
P点: 37GHz, V=257(K), 19GHz, V=260(K)
Q点: 37GHz, V=239(K), 19GHz, V=254(K)
R点: 37GHz, V=200(K), 19GHz, V=177(K)
3.4.3 オホーツク海用アルゴリズムの検討
海氷のマイクロ波放射特性は氷の種類、厚さ、表面形状等による影響を大きく受けるため、多周波、多偏波の利用が有効であるとされているが、今回、19GHzの水平偏波のみを使用したアルゴリズムを考えた。これは、オホーツク海には多年氷がなく一年氷のみであること、一年氷と海水域の輝度温度は、図3.11からもわかるように水平、垂直偏波とも大きく差があることから、オホーツク海では単周波でも可能ではないかと判断した。計7種(85V, 85H, 37V, 37H, 22V, 19V, 19H)の周波および偏波のSSM/Iデータのうち、最も氷と海水域の輝度温度の差の大きい19GHz水平偏波(図3.18(a))に着目し、使用した。図3.18(b)は、図3.18(a)におけるY=20, 40, 60, 80のところで東西方向に切った輝度温度の分布図で、陸域のデータはプロットしていない。この図と可視画像を比べると、海氷密接度が高いところは輝度温度が高く、密接度が低いところや海水域では輝度温度が低い。また、海域全域の輝度温度をプロットした散布図から、19GHz水平偏波の輝度温度分布は主に95〜245(K)の範囲にあるため、輝度温度が100(K)のときを密接度ゼロ、240(K)のときを密接度100として決定し、下記に示す基本式および図3.16(b)を用いて各点における海氷密接度を求めることにした。
海氷密接度:C=(TB-TBw)/(TBi-TBw)