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2.4 マイクロ波散乱計

 

マイクロ波散乱計はレーダの一種であり、地表面などの対象にマイクロ波を発射し、散乱されて戻ってくる電力を受信して、対象の規格化散乱断面積(σ0)を定量的に測定するセンサである。このために、マイクロ波散乱計では、送信系、受信系、伝送線路系、アンテナ及びデータ処理・記録系の個々及びこれらを組み合わせたシステム全体に対して、運用中及び運用の前後で高精度の較正が行われなければならない。近年の能動型センサではこのような較正系を備えまたシステム全体の較正を行うことが一般的である。

航空機や人工衛星に搭載される実用のマイクロ波散乱計でこれまでに開発されたものは、降雨の3次元分布を観測する降雨レーダ(散乱計)及び海面の規格化レーダ散乱断面積(NRCS: Normalized Radar Cross Section)の測定から海上風ベクトルを推定する海面散乱計がある。人工衛星搭載の降雨レーダの最初のものは、1997年11月に打ち上げられた熱帯降雨観測衛星(TRMM)に搭載された降雨レーダ(PR: Precipitation Radar)で、13.8GHzを用い、電子走査のペンシルビームで衛星の進行と直交する方向にビームを掃引する。最近、降雨レーダと同じ90GHz程度のミリ波を用いて雲の3次元分布を観測する雲レーダが提案されている。

海面散乱計の最初のものは、1978年に打ち上げられた米国の海洋観測衛星SEASATに搭載されたSASS(SEASAT - A Satellite Scatterometer)で、14.6GHのマイクロ波を用い、棒状のアンテナによる扇型のファンビームで海面を照射する方式(Stick Scatterometer)を用いた。ヨーロッパ宇宙機構(ESA)は同じ方式による5.3GHzの海面散乱計(AMI/Wind-Mode)を1992年に打ち上げたERS-1及び1995年に打ち上げたERS-2に搭載している。日本が1996年9月に打ち上げた地球観測プラットフォーム技術衛星ADEOSには米国の開発した棒状アンテナのNSCAT(NASA Scatterometer: 14GHz)が搭載されている。さらに、1999年に日本が打上げ予定のADEOS-?には米国の開発するコニカル走査ペンシルビーム・アンテナのSeaWinDS(13.4GHz)が搭載される予定である。

 

2.5 マイクロ波高度計

 

マイクロ波高度計は、飛翔体の軌道を基準に、その直下の地球表面との距離を測定するものであり、海流等の海洋の中規模な現象などを含む海洋ダイナミクス、ジオイド高の研究、散乱強度の測定による海上風速や波高の観測、また、氷床の形状観測等

 

 

 

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