(6) マイクロ波の体積散乱
電波がある境界を通して、一方の媒質から他方の媒質に進入したとき、媒質内部で散乱が生じた場合、これを体積散乱と呼ぶ(図2.9)。体積散乱は降雨のように多数の散乱体が広がっている場合や、媒質が不均一あるいは誘電特性の異なる媒質の混合物である場合に生じる。樹木や枝、土壌内部、積雪内部からの散乱の例もある。
体積散乱の強さは、媒質内の誘電体の不連続性と媒質の不均一性の密度に比例する。また、その散乱角度特性は媒質表面の租さ、媒質の平均比誘電率、および媒質内の不連続性と波長との関係で決まる。体積散乱を起こす物質に対してレーダ観測を行なった場合、受信される信号強度は、体積散乱の強さと受信信号の範囲であるレンジゲートとビーム幅で囲まれた領域(散乱体積)の積に比例する。