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(4) マイクロ波の放射

通常の物体は、黒体とは限らず完全な熱放射の吸収体でないので、グレイボディと呼ばれ、熱放射から物理温度を観測する場合には、放射率εによる補正が必要である。従って、対象物の物理温度Tと測定される輝度温度TBとの関係はTB=εTで表される。

物体の放射率は常に0≦ε≦1であり、放射率は物体の誘電率や表面の粗さなどの物理的性質と周波数、偏波特性、入射角、方位角により変化するため、輝度温度もこれらの性質、条件により変化する。図2.6は放射率の塩分濃度および入射角依存性を示したものであり、図2.7は2種類の含水量の異なる粘土および海水における水平および垂直偏波の放射率εv、εhの入射角依存性を示したものである。

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マイクロ波放射計の場合、測定可能なのは輝度温度であるが、測定対象物の性質および状態と直接結びつくのは放射率と物理温度である。このため、放射率と物理温度を分離したり、輝度温度の中に含まれる大気放射成分を分離するアルゴリズムの開発が必要となる。

また、マイクロ波放射計のアンテナが受信する温度をアンテナ温度と呼ぶ。アンテナ温度はビームの覆う全方向からの放射の総量であるため、この量から輝度温度を推定するためにはアンテナパターン関数で表されるアンテナの指向特性を考慮して、補正する必要がある。

 

 

 

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