(3) マイクロ波の減衰
マイクロ波はセンサとターゲットの間にある大気を通過する時、大気中の分子による吸収や粒子による吸収・散乱を受けて減衰する。吸収と散乱によりマイクロ波の強度は伝搬する距離に対し指数関数的に減衰する。したがって、一様な大気条件ならば電波の減衰をdBで表わしたとき、距離に比例して減衰量は大きくなる。この単位距離あたりの減衰量を減衰係数と呼ぶ。
図2.5は周波数によって大気中の分子による減衰がどうなるかを示したものである。周波数が10GHz以上になると影響が現われてくることがわかる。また大気中の分子による吸収の強さは、特定の周波数(吸収線)を中心として大きく変化する。この大気の吸収の主な要因は酸素分子と水蒸気であることから、周波数をうまく選ぶことによりある程度減衰を避けることができる。
一方、衛星から地上を観測した場合には大気中の経路が長くなることから、大気組成や気温の変化が吸収係数の変化として観測される。例えば、水蒸気の吸収バンド付近での吸収係数の変化から、マイクロ波放射計により大気中の水蒸気量の変化を知ることが可能となる。
大気中の粒子による散乱として顕著なものは雨滴によるものである。降雨強度が大きくなるにつれて減衰量が大きくなり、おなじ降雨強度に対しては周波数が高くなるにつれて減衰が大きくなる。しかし、40GHzを越えると周波数にあまり依存しなくなる。