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第1章 総論

 

1.1 研究開発の背景と目的

 

衛星観測技術の発展に伴い、気象衛星に加えて地球観測衛星による気象海洋の観測が可能になってきた。気象衛星は対象物からの赤外線および可視光線を測定することにより、主として雲の高さや状態および海面水温・海氷等を観測する。気象衛星による観測データは、台風監視や台風進路予報および毎日の天気予報にとって重要な資料になっている。

一方、地球観測衛星に搭載される計測センサーには、電磁波を発信してその反射波・散乱波を観測する能動型、対象物からの電磁波を観測する受動型のセンサーがあり、目的に応じて波長帯域(マイクロ波、赤外線、可視光線等)が選ばれる。これら計測センサーの技術的発展により、海上風、波浪、海流、海氷、海面水温、塩分、クロロフィル等の多くの物理量を計測することができるようになってきた。

海洋の観測は、所轄官庁の観測船や海洋ブイ、および民間船舶により行われている。これらの観測は航路上や観測線・観測点といった限られた海域でしか行われず、観測情報は航路上に偏って分布する。また、船舶による観測は、台風やしけの中では非常な危険や困難を伴っている。

このような現場観測と比較すると、衛星による観測は気象状況に左右されず、また、特定の海域に偏らないで観測を行うことができるという利点がある。従って、計測手法・精度の向上に伴って、今後ますます、地球観測衛星が利用されるようになるであろう。

欧米では地球観測衛星による計測技術が業務に取り入れられつつある。一方、日本では衛星によるマイクロ波のリモートセンシングデータが得られるようになってからの経験は浅く、データの解析処理技術は十分に確立していない。以上より、本事業では衛星により計測されたマイクロ波データから、海氷分布を抽出する解析処理技術の開発を試み、これらの技術を海氷観測業務に役立てることを目的とする。これにより、海氷情報がより詳細かつ迅速に得られることが期待され、冬季における船舶の安全航行や重要課題である気候変動研究に役立てることができる。

 

 

 

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