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聞いて,それが該当すれば心筋梗塞(または時に解離性大動脈瘤)であることは確実です。こういう状態は緊急を要します。そういう場合にはすぐに救急車の手配をしなければなりません。たとえ胃がムカム力して吐いたという訴えであっても,冷や汗をかいていたとすれば,まず心筋梗塞を疑って緊急の手配をする。なぜかといえば,胃の病気ではよほど胃からの大出血でもない限り急変することがないからです。

階段を昇ったり,食事をした直後に胸が痛いというときには,心臓に負担が加わって起こった狭心症でしょうし,負荷が加わってもなんともないのに,夜中に心臓が苦しくなるのは異型狭心症か重症狭心症です。このように静かにしていても起こる狭心症はとてもたちが悪く,心筋梗塞前狭心症ですから,すぐに心電図をとらなければなりません。

「動悸がするのですが……」というのは,心臓が悪くなくても,期外収縮があるとか,頻脈,肺の鬱血,弁膜症,あるいは貧血があってヘモグロビンが低下しているなどいろいろの病気が考えられます。甲状腺機能亢進症でも動作や息切れは起こります。心拍数が70から80にもなり,心臓収縮が過度になるからです。

貧血という用語を患者が使ったり,医療者が使ったりする場合には,その使い方についてはとくに注意を要します。脳貧血とか,顔が青いとか,手足の先が冷たいとかなどと患者さんが表現することが多いのですが,これはよく聞いて貧血といえるかどうかを吟味すべきです。貧血とは,ヘモグロビンが少ないということです。

 

 

 

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