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3-1-3 Science Mapの方法論〜科学分野および分野間の距離をいかに定義するか〜

 

(1) はじめに

「超領域科学としての海洋研究」においては,海洋科学を形成する研究領域の相互関係を可視化する作業を行っている。この可視化は,海洋科学を形成する諸研究領域間の関係を一日で判断するために有効な作業である。しかし,この可視化作業のためには,まず海洋科学を構成する研究領域の定義と,その領域間距離を定義することが必要となる。また,海洋科学に限らず,ある学際研究分野を把握するためには,やはり上記のような研究領域の可視化が重要である。そこでもやはり,領域の定義と領域間距離を定義することが必要となる。そこで,本稿では,この「研究領域の定義」,「研究領域間距離の定義」というものが,どのように操作的あるいは理論的に可能であるか,について考察する。

 

(2) 領域とは何か?

?教育制度からの定義

研究領域とは何かを考える際,ひとがまず思い浮かべるのは,disciplineの定義である。disciplineは,「それ自体の教育訓練上,手法上,分野上,特定され,教えることが可能な知識の集合体」である(1)。しかし,このなかに教育訓練という言葉が入っているように,disciplineの定義には,教育「制度」の側面が入ってくる。知識生産の現場による研究領域の定義と,教育制度の現場からの領域の定義とでは異なることが予想される。

 

?知識生産の現場からの定義

以下に知識生産の現場からの定義を考えてみよう。

現代科学の知識生産にとって重要なのは,専門誌(ジャーナル)への投稿・編集活動である。現在世界中でscientific journalの数はSCI(サイエンスサイテーションインデックス: 米国のデータベース作成機関Institute of Scientific Information Inc.が作成している科学技術文献データベース)に用いられるものだけでも7,000を越えている。この1つ1つのジャーナルは,現代科学の知識蓄積にとつて大きな役割を果たしている。

 

 

 

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