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?V 結果

表2に受診者の職業を示す。退職したものおよび複数の職歴を有するものでは、最も長期間従事したものにより分類した。男性では漁業、農林業が多く、女性では農林業、主婦、漁業の順であった。男性のみでなく、女性も多く重労働に就いていた。食べ物の嗜好については殆ど全員が魚を好んで頻回に食していた。

腰痛の既往は男性53例(96.4%)、女性81例(93.1%)に認めた。腰痛の出現した時期を各年代別に調べたが(表3)、各年齢層に分かれており、一定の傾向はなかった。

脊柱靭帯骨化は男性23例(OPLL2例、OLF2例、他はOALL)、女性17例(OPLL4例、OLF2例、他はOALL)に認めた。すべり症は男性8例(15%)、女性15例(17%)であり、全例腰椎であった。圧迫骨折は頚椎にはなく、胸椎か腰椎いずれかに存在したものが男性7例、女性15例で、男性はすべて60歳以上、女性は50歳以上であった(表4)。

年代別骨萎縮度の結果を表5に示す。男性では骨萎縮と診断されたものは3例で、いずれもI度であった。女性では骨委縮は28例にみられ、全例60歳以上であり60歳以上の45%に相当した。

 

IV 考察

われわれは、1995年に「へき地における腰痛に関する研究」(日本財団補助事業)として山村労働者(栃木県栗山村)の脊椎に関する実態調査を行い、特に腰痛については山間労働がかなりの悪条件であると報告した。今回の研究動機は、沿岸部でしかも漁業を主産業とし、都市部とは交通的に十分離れた遠隔地の住民の脊椎検診の実態を知ることにより、前回の山間部における検診の結果と比較検討ができるのではないかと考えたからであった。

調査対象となった142名は、北浦地区の成人人口(約1100名)の約13%に過ぎない。また、脊椎の検診として呼びかけたので、腰痛などの愁訴のあるものが積極的に受診した可能性がある。北浦町は漁港の町であり、その職業も漁業と農林業が多く、併せて全体の40%に近い(表6)。今回、受診した対象の職業分布も、この点では北浦町の労働環境を反映した対象であるといえる。都市部に比較していわゆる第一次産業である重労働に従事している対象が多くこれが、腰痛有病率が高い一因である可能性がある。

栗山村の腰痛有病率(男性92%、女性82%)と比較して、今回の結果(男性96.4%、女性93%)は同様な結果であった。腰痛の起きた時期、脊柱靭帯骨化、すべり症、圧迫骨折についても栗山村と比較して特に違いは認められなかった。ところが、女性における各年代別の骨萎縮度を比較すると、栗山村は

 

 

 

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