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の開発を行った[26]。方法の原理は、基本的にfracture-label法を用いて行う。先ず未固定新鮮試料を急速凍結・凍結割断しレプリカ膜を作製する。次に免疫細胞化学、酵素細胞化学の順で細胞化学を行い、それぞれ抗原と酵素活性の検出した後、電顕で観察する(図-13)。Fracture-label法は、割断された生体膜は物理的固定しか施されておらず免疫細胞化学及び酵素細胞化学において理想的な場を提供してくれている。つまり、往々にして免疫細胞化学と酵素細胞化学では固定条件が異なり同時検出は難しいが、この方法では化学固定が必要ないからである。

非刺激時ヒト好中球の同一レプリカ膜上において、HLA class-I抗原の局在を10-nmの金コロイド粒子を用いた免疫細胞化学で、NAPの局在をセリウムを捕捉剤とした酵素細胞化学で可視化したレプリカ像を図-17に示した。HLA class-Iを示す全コロイド粒子は好中球細胞膜のE-面(つまり細胞表面)に一致して認められ、NAPを示すセリウムの反応産物は細胞内小顆粒(E-面)に一致して陽性に認められた。

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E レプリカ細胞化学と好中球細胞内顆粒の分類

レプリカ酵素細胞化学の開発の成功によって、好中球細胞内顆粒膜の同定、NAP分子の二次元分布、NAP分子と他の分子との相互関係を高解像力で解析することが可能となった。現在、レプリカ細胞化学の手法を用いて、GPI-アンカー型蛋白質の動態解析を進めているところである。その一例として、NAPとCD16の局在を示した電子顕微鏡写真を図-18に示した。NAP陽性の細胞内顆粒が認められる一方、CD16は細胞膜にその局在を示す全粒子の標識が認められるのと同時に細胞内の顆粒にもその存在を示す金粒子の標識が認められた。一部はNAPを示す反応産物とCD16を示す金粒子が同一の顆粒に認められた。まだpreliminaryな段階であるが、GPI-アンカー型蛋白質を含む顆粒にはかなりのheterogeneityがありそうである。

 

 

 

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