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Ecto-ATPaseの検出を行った(図-15)[18]。Ecto-ATPaseの局在は電子密度の高い反応産物として好中球形質膜のレプリカ膜上(E-面:細胞膜の細胞外表面)に認められた。

 

C Enzyme Cytochemical Fracture-label法

Fracture-label法は、未固定新鮮試料を急速凍結・凍結割断しレプリカ膜を作製した後、酵素細胞化学的手法で酵素を標識し電顕観察する方法である(図‐13)。レプリカ膜作製後の膜に付着している試料の除去は、label-fracture法にくらべ比較的容易でありTriton X-100,saponin等のdetergents又は超音波洗浄によって未固定試料を除去することが可能である[24]。Fracture-label法には以下のような利点が考えられる。

?@凍結割断された生体膜は、金属と炭素による物理的な固定しか施されていないため、化学固定したものより酵素活性の保存に優れている。

?A試料は急速凍結したまま物理的固定が施されるため、生体の状態に近い酵素分子の生体膜中の二次元分布を知ることができる。

?B薄皮一枚のレプリカ膜(正確には凍結割断された生体膜の半分を物理的に固定しているレプリカ膜)で酵素活性の検出を行うため、浸透性に優れており反応液が確実にレプリカ膜上の酵素分子に到達しうる。

非刺激時のヒト好中球においてNAP活性をfracture-label法で検出したレプリカ像を図-16に示してある。NAP活性は細胞内の小顆粒のE-面に一致して認められた。Fracture-label法によるNAP局在は従来の生化学的[7]及び形態学的研究[12,19]とよい一致を示した。

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D レプリカ免疫・酵素細胞化学:同一レプリカ膜上での抗原と酵素活性の検出

レプリカ酵素細胞化学の開発の成功によって、特定の酵素分子の同定、生体膜中の酵素分子の二次元分布を明らかにすることが可能となった。しかし、生体膜の酵素分子が同じ生体膜中の他の分子とどの様に関わりを持っているのか、その相互関係を明らかにするためには同一レプリカ膜上で多重標識を行うことが必要となる。そこで我々は更に、同一レプリカ膜上での酵素細胞化学と免疫細胞化学による多重標識法

 

 

 

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