B Enzyme Cytochemical Label-fracture法
従来はレプリカ膜上に酵素活性を確実に残すことは容易なことではなく、レプリカ酵素細胞化学の方法上の開発にあたり、腎臓のacid phosphatase(ACPase)活性を例にとり開発を行った。ACPaseはよく知られているライツゾームの標識酵素であり、腎臓の近位曲尿細管上皮には多くのライソゾームが存在しているので、モデル実験として選んだのである。
Label-fracture法は、通常の酵素細胞化学的手法で酵素活性を検出した試料を凍結割断し、引き続きレプリカ膜作製を行うため(図-13)事前に化学固定(例えば、パラフォルムアルデヒドやグルタールアルデヒド)した試料を使用する。そのため、レプリカ膜作製後、膜に付着している試料の除去が問題となる。通常のレプリカ法では、次亜塩素酸(家庭用の漂白剤)等の強力な薬品によって試料を溶解除去する。開発の当初、鉛法を用いてACPase活性検出を試みていたが、間違いなくACPase活性をリン酸鉛の反応産物として検出しているにも拘わらずレプリカ膜上に活性を観察することができなかった。そこで捕捉剤である鉛の代わりにセリウムを用いてみると見事にレプリカ膜上に反応産物を残すことができた(図-14)。より安定なセリウムを捕捉剤に用いることにより、次亜塩素酸等によるレプリカ膜の洗浄後も酵素活性の局在を示すリン酸セリウムの反応産物がレプリカ膜上にとらえられることが可能となった[23]。ACPase局在を示すセリウムの反応産物はライソゾーム膜のE-面に一致して認められる(図-14)。更に、X-線元素分析を行いレプリカ膜に残っているものが間違いなくリン酸セリウムの反応産物であることを確認している[18]。
この方法を応用として、ヒト好中球において、細胞膜表面に活性基を持つ