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?V NAPの細胞生物学的展開

 

A細胞内顆粒分類のためのレプリカ細胞化学法の開発

より正確なNAP scoreのためのNAP活性検出法が可能となったわけであるが、このNAPを含む新しい顆粒に関して、その特徴付け及び細胞内顆粒の分類が全て解明されたわけでなく、I-Cでふれた様な不明な点が残されていることも事実である。今回の細胞生物学的研究を進めるためには、NAPを中心としたGPI-アンカー型蛋白分子が顆粒膜に微量に存在する膜蛋白質であるため、顆粒膜上にこれら分子を同定し、個々の顆粒及びGPI-アンカー型蛋白分子の動態を明らかにできる解像力の高い形態学的解析法が必要となった。そのためには、広い範囲で生体膜分子を可視化できるレプリカ膜上で生体分子を細胞化学的に標識し、その局在を明らかにすることが不可欠となり、凍結割断レプリカ法と酵素細胞化学を結合した新しい形態学的手法(レプリカ酵素細胞化学)の開発を試み、細胞内顆粒の新しい分類・動態解析を行いたいと考えた。

凍結割断レプリカ法とは、凍結した組織又は細胞を極低温下で凍結割断し、露出した生体膜の割断面に金属と炭素の薄膜(レプリカ膜)を蒸着した後、もとの試料を取り除き、細胞膜の疎水性内面の鋳型であるレプリカ膜を観察する形態学的手法である(図-12)。この方法は、樹脂包埋した試料の薄切による生体膜横断面像の観察と異なり、生体膜を広い範囲で露出し膜の内在性蛋白質を膜内粒子として観察することが可能であるため、生体膜構造・動態解析の極めて有力な手段となっている。しかし、露出された生体膜がどの様な分子で構成されているかを明らかにすることは、この手法のみでは困難であった。最近、その問題を乗り越えるべく“レプリカ細胞化学”の手法が開発された。その基本的な原理は、凍結割断レプリカ法と細胞化学を組み合わせることにより、生体膜上に存在している種々の分子を標識し、その局在を明らかにするものである。特に、Pinto da Silvaらのグループにより開発されたレプリカ免疫細胞化学法は生体膜分子を金粒子で標識し可視化する方法であり、生体膜の構造解析に広く応用されている[9,14]。

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