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セリウム法の光顕レベルでの可視化の優れている点は、グルタールアルデヒドで好中球を固定しているため、NAP顆粒の微細な動態変化の検出が可能であることもあげられる。図-10で示したように、fMLP,PMAによる刺激に対してNAP顆粒は非常にダイナミックなup-regulationを起こす。塗抹標本では良好な形態保存ができず、NAP顆粒の変動をとらえることができないのに対して、グルタールアルデヒド固定-セリウム法→Ce-H<SUB>2</SUB>O<SUB>2</SUB>-DAB-Ni発色では、刺激に対するNAP顆粒のup-regulationの様子が光顕上でとらえることができた(図-10)。
NAP顆粒は、他の二大顆粒に先立ち脱顆粒することが知られている[4,5]。つまり、特殊顆粒やアズール顆粒が脱顆粒しない様な弱い刺激に反応して脱顆粒するのである。従来ではとらえることのできなかった変化を光顕上でとらえることができるようになったことから、NAP scoreの種々の臨床診断・予後判定に有用性が増すことが期待される。又、注目すべき点は、塗抹標本-アゾ色素法による従来の分類では、細胞内のNAP陽性顆粒の数のみで0〜VI型に分類していたのであるが、グルタールアルデヒド-セリウム法を用いることによりNAP顆粒の微細な変化をとらえることが可能となったため、単にNAP顆粒の密度のみの分類だけでなく、管状の変化、又は巨大顆粒状の変化等の新しい分類提唱の必要性を示唆した。特により早期を変化であるNAP顆粒の管状変化は、臨床の様々な疾患における臨床診断・予後判定に有効と思われる。

セリウム法は先にも述べたようにそのままでは光顕観察することはできない。今回、我々はHalbhuberらのCe-H202-DAB-Ni法[11]を応用することでよい結果を得た。セリウムの反応産物の光顕レベルでの可視化はいくつか報告されている。Angermuller and Fahimiらはperoxisomal oxidasesの活性の検出に際して、過水酸化セリウムの反応産物中のセリウムをtransition mental compoundとして用いたDAB反応による可視化、又は、反応産物を鉛に置換し、更に硫化鉛に置換することによる可視化に成功している[2]。又、Robinson and Battenは、acid phosphatase活性等の検出に際して、セリウムの反応産物を共焦点レーザー顕微鏡の反射モードを用いることにより直接観察できるとしている[15]。
NAP活性検出に際して、リン酸セリウムの反応産物は、?@Ce-H202-DAB-Ni法による可視化 ?A反応産物を鉛に置換し更に硫化鉛に置換する方法による可視化 ?B共焦点レーザー顕微鏡での直接観察等が可能と考えられるが、NAP活性検出が臨床検査に応用されることになると、共焦点レーザー顕微鏡は高価であり普及の面で問題があろう。又、反応産物を鉛に置換し更に硫化鉛に置換する方法は、最初からあえてセリウム法を用いる必要はなく、鉛法で検出すればよいことになるが、NAP活性の鉛法による検出には問題があることは既に述べた。以上の点から、現時点ではCe-H202-DAB-Ni法による可視化がNAP活性検出に最も適していると考えられる。

 

 

 

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