NAP scoreの再評価を行うに際し、従来のアゾ色素法に関して以下のような疑問が生じた。
?@我々が日頃、NAP顆粒を電子顕微鏡(電顕)レベルで解析する際、NAP活性の酵素細胞化学的検出法としてセリウム法を用いていており、NAP顆粒は小顆粒状の細胞内小器官として観察されるにもかかわらず、アゾ色素法では個々の細胞でNAP顆粒の数と形態にかなりのばらつきがあり、時として粗大顆粒状〜細胞質が塗りつぶされた瀰漫性な構造物として観察され、その間には矛盾がある。
?A塗抹標本-アゾ色素法によるNAP活性の光顕観察は非常に簡易ではあるが、塗抹標本は超微形態の保存ができないため、電顕を用いた詳細な顆粒動態の解析にそのまま移行できない。
以上の問題点は、塗抹標本-アゾ色素法で見ているNAP顆粒の状態が、in vivoの状態からかけ離れている可能性があると考えられ、光顕レベルでのより正確なNAP活性検出法の開発が必要と考えられた。
電顕レベルでのNAP顆粒の動態解析を行うためには、NAP顆粒を標識し可視化してやることが必要であり、我々はNAP類粒標識法(NAP活性検出法)として、最も信頼のおけるKobayashi and Robinsonのセリウム法を用いてきた[12]。セリウム法の原理は、好中球の細胞内顆粒に存在するNAPによって基質であるβ-グリセロリン酸が分解され、生じた遊離リン酸を反応中に添加してあるセリウムでNAPの存在するすぐその場で捕捉し、リン酸セリウムの不溶性の電子密度の高い反応産物が生成されるため電顕観察が可能となる(図‐4)。しかしこの用法の欠点は、生じたセリウムの反応産物が光学顕微鏡レベルでは無色であり観察することはできない点にあった。我々は、何とかこのセリウムの反応産物を光顕レベルで可視化することにより、従来の光顕と電顕との“溝”を埋めたいと考えた。