[IX]へき地診療所におけるリハビリテーションの現状に関する研究
後藤忠雄 自治医科大学地域医療学
谷岡 淳 自治医科大学附属病院
リハビリテーションセンター
奥野正孝 自治医科大学地域医療学
山田誠史 岐阜県和良村国保病院
高橋治樹 岐阜県坂内村国保診療所
杉田義博 熊本県上天草総合病院
濱崎圭三 岐阜県春日村診療所
名郷直樹 愛知県作手村診療所
I.はじめに
我々はこれまで、へき地における薬局およびX線撮影の実態と問題点を報告してきた1)2)。これらの検討の背景としては、へき地診療所の質的向上を図るために、これまでは医療機器を中心としたハードウエアの設置に重点が置かれ、充実がなされてきてはいるものの、今後の診療所機能のいっそうの向上のためには、診療所の運営、従業員の教育、適切な医療機器等の使用方法等のソフトウエアの充実が必要不可欠となってきていることがある。その中でも早期に対応が必要となってきているのは、本来コ・メディカルスタッフ(理学療法士、作業療法士、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師)がいて行うべきことを、医師が担っている部分であると考えている。
一方、Common diseasesのうち、上位を占めている腰痛、膝痛や、在宅寝たきりの原因となる脳血管障害や大腿骨頚部骨折は、薬物療法の他にリハビリテーションが治療上重要な役割を持っている。事実、プライマリ・ケア・セッティングであるへき地診療所は、こうした医療を担っている。しかしながら、これまでリハビリテーション・理学療法機器を含め医療機器を中心としたハードウエアの設置に重点が置かれ、充実はなされてきているものの、理学療法士などソフトの面での充実は追随しきれておらず、へき地診療所の医師が、リハビリテーションの指導・評価等の任を負わなければならないのが現状と思われる。
そこで今回我々は、理学療法士あるいは作業療法士のいないへき地診療所において、リハビリテーションの業務をどう行っていけばよいか、さらに、それらをサポートするにはどうすればよいか等の検討と、それを基にへき地診療所におけるリハビリテーション業務が適切に実施できるようにするための基礎資料として、へき地診療所のリハビリテーションの実態と問題点を明らかにすることを目的に本研究を行った。