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割合でコア抗体の消失がおきているものと推定された。

さらに,全体としてみるため,平成2年の検診受診者のうち40歳から65歳のコア抗体陽性の割合が7年後には変化するかどうかを検討した。平成2年の検診受診者1063例のうち40歳から65歳の682例でコア抗体陽性者は192例(28.2%)であった。一方平成9年の検診受診者897例のうち47歳から72歳の553例でコア抗体陽性者は119例(21.5%)であった。これは,前記のHCVの新規感染はほとんど起きていないこと,約1%の割合でコア抗体の消失が起きていることを裏付ける結果である.

 

1).新たな肝細胞癌の発生

新たな肝細胞癌の発生は平成8年3例,平成9年5例であり,この2年間でみると,胃癌(7例),大腸癌(3例),肺癌(2例)より多かった。悪性新生物実態調査報告から算出した基準集団の罹患率と当村の訂正罹患率とを比較すると,他の癌が0.9倍から1.7倍であったのに対し,肝細胞癌は4.7倍の罹患率であった。

 

E.新たな肝炎ウイルス(TTV)の陽性率

TTV3)は1997年に報告された,新たな肝炎ウイルスであり原因不明の輸血後肝炎の原因として注目されてきている。今回は,C型肝炎患者,検診でのHCVコア抗体陽性者,陰性者それぞれ10名につきTTV-DNAの有無を検討した。TTVの陽性者は,C型肝炎患者10例中4例(40.0%),検診でHCVコア抗体陽性例10例中3例(30.0%),HCVコア抗体陰性例10例中1例(10.0%)であった。

 

V.考察

抗HCVコア抗体はCP-9およびCP-14というHCVのコア領域に属するアミノ酸の合成ペプチドに対する抗体である。この抗体の陽性者に、肝機能異常者の割合が多いことは現在までに報告されてきたとおりであるが、今回は、コア抗体の陽性率と肝機能異常者の発生率を比較検討してみた。住民検診全体ではコア抗体陽性率は16.2%であったが,地域的にみると,今回の対象地区の西部にあたるA地区の住民161名では43名(26.7%)がコア抗体陽性であった.このようにコア抗体の陽性率には差が見られたが,肝機能異常には地域差は見られなかった.年齢的にみるとコア抗体陽性群では肝機能異常者が多く,年齢とともに上昇する傾向が認められた。また、コア抗体陽性群には,注意深い観察により肝機能異常を来す者が多く,肝機能異常を来さない,いわゆる無症候性キャリアは,ワンポイントでは肝機能正常であったコア

 

 

 

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