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と虚血性心疾患の関連が注目され、海外の疫学調査では特にC.pneumoniaeに対する血清IgC抗体が虚血性心疾患患者で高率に認められることがわかってきた。さらに、冠動脈アテロームから採取された組織にC.pneumoniaeの菌体が証明されている。一方、イギリスのMendallらは虚血性心疾患患者においてC.pneumoniaeだけでなくH.pylori感染率が高いことを報告し、その関連性が注目されるようになった。

H.pylori感染は全世界で認められるが、特にわが国ではその感染率は欧米に比較し非常に高い。しかし、その感染経路についてはまだ不明な点が多い。また、C.pneumoniaeの感染状況についてはわが国ではほとんど検討されていないのが現状である。

今回、都市近郊と海岸部、および山村部におけるH.pylori、C.pneumoniaeの感染状況について検討した。H.pylori陽性率は紀和町が69.4%と非常に高く浦和市では34.8%であった。一般にH.pylori陽性率は欧米先進国では低く、開発途上国では高いといわれている。わが国では1950年以前生まれの人に感染率が高いと報告されている。しかし、今回のデータでは3地区における対象者の平均年齢がほぼ一致しているにもかかわらず陽性率に大きな差がみられた。都市近郊の浦和市ではH.pylori感染症は欧米型を呈していることが示唆された。さらに浦和市は主に医療従事者が対象であったが、特にその感染率が高いとはいえないことがわかった。

C.pneumoniae感染は、H.py1ori感染とは逆に浦和市で高率であった。今日まで職業による感染率の違いについては検討されていないが、C.pneumoniae感染は市中肺炎の原因菌でもあり、今回のデータから医療従事者に感染率が高い可能性が示唆された。今後、浦和市における医療従事者以外の感染率の検討が必要であろう。

水道の種類による検討ではH.pylori感染について興味あるデータが得られた。井戸水使用者のH.pylori感染率が高く、さらに水洗トイレ使用者の感染率が19%と非常に低いことから、生活環境における水質の種類の相違が重要であることが示唆された。地区別の検討では浦和市においては水洗トイレ使用率が他の2地区より高く、この結果はH.pylori感染が低率であるという結果との関連が示唆された。

Housing Indexは欧米ですでに報告されているが、わが国ではほとんど研究されていない。小児期の居住室内人口密度を検討したものであるが、H.pylori陽性者は陰性者と比較して有意に高いindexを示した。これは欧米の報告と一致していた。C.pneumoniae感染については10歳時の生活環境との関連は今回の検討では認められなかった。

次に食事の摂取状況を調べたが、これは10歳時の食事については詳細なデータ

 

 

 

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