日本財団 図書館


利用者へのケアの振り返りを行なったり積極的に施設内研修を持つといった活動をしている。ターミナルケアに限らずケア方針の有る無しはケアの質に大きく影響する。

介護職が困難感を感じている利用者や家族との関係や精神的負担については経験年数との関係が大きい。ゴールドプランを意識し作成された社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針の概要には経営者が行なうべき措置として職員処遇充実、資質向上などに具体的項目が示されている。職場内外の研修体制の整備や参加促進、介護福祉士国家資格取得のための学びやすい環境作りなど国および地方公共団体がこれらを支援する必要性を指摘していることは心強い。この措置が実現されていけば指針の目的に示されるように専門的知識・技術と豊かな人間性を備えた資質の高い人材が増え魅力ある職場となり利用者のみならず地域住民にもターミナルケアが特養ホームの目玉としてサービスメニューに導入できる日も遠くないと考える。自由記述でも施設内研修を望む声が高く介護技術や判断能力の向上を願う声が多く聞かれた。特に利用者の精神面でのケアとにして不安の援助についての学習ニーズが高いと思えた。

 

V.まとめ

県内の特養ホームの施設長、看護職、介護職を対象にターミナルケアについて実態を知る目的で調査を行なった。その結果、41名の施設長、43施設の114名の看護職、51施設689名の介護職から回答を得ることができた。特養ホームのターミナルケアについての実態と今後の課題を以下に述べる。

A.県内特養ホームのターミナルケアの実践は10施設が熱心に取り組み、終末期は病院で過ごすことにしているという方針の施設は8施設あった。模索の段階だが将来的には重要な課題であると考える施設は少なくない。7割の施設には仏間や礼拝所があり故人の死後も安らかな眠りを願う儀式を実施し利用者に対して重要なケアを行なっていた。施設の課題として終末期を家族と過ごすための個室の整備、利用者本人の自己決定を尊重するLMDへの取り組み、社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置項目の早急な実現などである。

B.看護職は日常の医療処置や利用者の健康状態の把握で業務時間の殆どが占められ利用者や家族との関わりを持つ機会がないことに葛藤を感じていた。ターミナルケアの必要性は十分感じていたが家族との関係や介護職との連携に課題を持っていた。看護職の課題は今後ますます重度化する利用者に対する健康管理の強化、介護職に対し医療的対応やターミナルで実施されるケアモデルを提示していくこと、積極的に介護職とカンファレンスを持つこと、マンパワーの確保を前提とした夜間の出勤体制を協議していくことなどが挙げられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION